腸内環境を整える乳酸菌の実力とは

「良い腸内環境を維持するためには乳酸菌を積極的に摂取した方が良い」といったこと、耳にしたことがあるという方はきっと多いですよね。

ヨーグルトやチーズなど乳酸菌を多く含む食品や乳酸菌のサプリメントが、腸内環境の維持・改善に効果的であることはテレビや雑誌などさまざまなメディアでも取り上げられています。

そこで今回は、腸内環境を整える乳酸菌について、その特徴や摂取方法をご紹介したいと思います。

本題に入る前に、腸内環境とは何であるかについて、簡単にご説明します。

腸内環境と腸内フローラ

私たちの大腸の内部には非常に多くの腸内細菌が生息していて、その数は100兆個とも言われています。

腸内細菌が私たちの腸内で1箇所に固まっていると言うわけではなく、似た種類の細菌同士が集合し大・小の群れを作って腸壁に点々と存在しています。

このような腸内細菌の群れを総称して「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」、または「腸内フローラ」と呼びます。

「叢」は「くさむら」を、「フローラ(flora)」は「植物群」を意味し、まるで広い草原の中で植物の花が咲いているかのように腸内細菌は生息しているのです。

腸内細菌は3種類

腸内細菌は細かく分類すると非常にたくさんの種類が存在するのですが、その働きごとに大別すると、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つに分けられます。

善玉菌は、我々の健康に良い影響を与え、悪玉菌は悪い影響を与え、日和見菌はそのどちらもの性質を持つ菌です。

これら3種類の腸内細菌が、善玉菌20%、悪玉菌10%、日和見菌70%といった割合で腸内に存在している状態が、良い腸内環境の定義となっています。

このうち善玉菌は私たちの健康的な身体には欠かせない菌で、この善玉菌の代表格が乳酸菌であり、その他ビフィズス菌などの菌が分類されます。

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細菌のバランスが重要

一方、悪玉菌には、ウェルシュ菌や大腸菌など悪臭のもととなる腐敗物質や有害なガスを産生して健康に害を与える菌が含まれます。

また日和見菌とは善玉菌でも悪玉菌でもなく、その時々の腸内環境によって菌としての働きが変わるものを指します。

これら善玉菌、悪玉菌、日和見菌の割合、つまり腸内細菌がバランスよく存在している状態というのが理想です。

今回ご紹介するのは、数ある腸内細菌の中でも、腸内環境を整えるのに役立つ乳酸菌についてです。

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乳酸菌ってどんな菌?

乳酸菌とは、糖類を分解して乳酸を産生するような細菌の総称です。

乳酸以外にも、酢酸や酪酸など、私たちの身体に有用な有機酸を産生するものも含まれています。

この有機酸の産生こそが私たちの腸内環境改善に重要な乳酸菌の役割なのです。

乳酸菌の種類

乳酸菌と呼ばれる菌は、生物学的な分類では数百種類が挙げられます。

乳酸や酢酸などの有機酸を生み出すという特徴は共通しているのですが、乳酸菌の種類によって少しずつその効能が異なります。

ここでは例として、私たちの身近にある商品に含まれている乳酸菌についてご紹介しようと思います。

菌名 特徴
ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株 乳酸菌飲料ヤクルトに含まれているこの菌は、酸に強く、胃酸や胆汁酸などに負けずに生きたまま腸に届き、腸内で善玉菌として作用するので、腸内環境の改善効果があります。
また、免疫力を強化したり、アレルギー反応を抑える効果もあることが知られています。
ラクトバチルス・ガセリ・SP株 雪印メグミルク製品や、明治のヨーグルト製品に含まれているこの菌は、生きたまま腸に届いて作用することが知られています。
ガセリ菌には、胃潰瘍や胃がんの原因物質として知られているピロリ菌を抑制する作用があったり、内臓脂肪を減少させる効果があることも報告されています。
ラクトバチス・ガセリ・OLL2716株
クレモリス菌FC株 カスピ海ヨーグルトに含まれているこの菌は、粘り成分であるEPS(エキソ ポリ サッカライド)を産生、胃液では消化されず、腸まで届いたのちに効果を発揮する乳酸菌です。
このEPSには免疫細胞を活性化、免疫力を高める性質があることも知られています。

このように、一言で乳酸菌と言っても、その種類や効能はさまざまです。

自分の身体の状態に合わせて最も効果的な乳酸菌を選びたいですね。

ところで、乳酸菌とともに有名な菌に、ビフィズス菌がありますが、みなさんはこの2つの菌の違いを知っていますか?

ビフィズス菌と乳酸菌の違い

善玉菌の代表格として乳酸菌と同様によく知られているのがビフィズス菌です。

ビフィズス菌の正式名称はビフィドバクテリウムで、私達の腸内には、乳酸菌の100倍から1万倍もの量のビフィズス菌が生息しています。

数だけで言えば乳酸菌よりもビフィズス菌の方が圧倒的に多いのです。

ビフィズス菌も生物学的には何種類かに分類できるのですが、共通するビフィズス菌の働きは、乳酸菌と同様に糖分を分解して酢酸や乳酸などの有機酸を産生し、腸内環境を弱酸性にすることです。

またビフィズス菌には、ビタミンB1・B6・B12を生成する働きもあります。

これだけ聞くと、乳酸菌よりもビフィズス菌の方が重要!と思われがちですが、実はこのビフィズス菌の繁殖を助けているのが乳酸菌の存在なのです。

乳酸菌が無ければビフィズス菌はその効果を発揮できなくなってしまうのです。

この2つの菌が相互に助け合いながら、善玉菌としての役割を果たしています。

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乳酸菌の役割とは?

腸内環境を整えて健康的な生活を送るためには、善玉菌を一定量、維持し続けなければなりません。

乳酸菌をはじめとする善玉菌は、悪玉菌が増殖しづらい環境を作るのに役立ちます。

ここからは、乳酸菌が腸内環境を整えることに役立つ理由をご紹介します。

乳酸菌は悪玉菌の増殖を防ぐ

乳酸菌が産生する有機酸は、私たちの腸内を弱酸性状態にします。

悪玉菌はアルカリ性の環境下で最も増殖しやすくなるのですが、有機酸による弱酸性環境下では増殖が抑制されます。

悪玉菌の活動を抑えることで、腸内で産生される有害物質の量は減り、腸で吸収され体内に循環する有害物質の量も減ることになります。

また、悪玉菌以外の病原菌や細菌の活動も抑えられるため、腸内を弱酸性にするということは疾患の予防にもつながるのです。

乳酸菌は便秘を予防する

乳酸菌には、便秘を改善・予防する作用もあります。

乳酸菌が生み出す有機酸には、大腸のぜん動運動を活発化して排便を促す作用があります。

ですので、ぜん動運動の低下が原因である便秘には、乳酸菌が効果的です。

また、善玉菌にはビタミンなど身体に有用な物質の産生や免疫力を高めたり、食物の消化・吸収を促進するなどの役割もあります。

こうした役割を担っているので、乳酸菌を摂ることが、腸内環境を整えることに役立つのです。

では、乳酸菌を摂取するには、どのような方法があるのかについて見ていきましょう。

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乳酸菌を増やす方法

悪化してしまった腸内環境をもとの状態に戻すためには、腸内にある善玉菌の量を増やすことが効果的です。

ビフィズス菌の繁殖には乳酸菌が必要なことからも、まずは乳酸菌の量を増やすことが重要になってきます。

それでは、腸内の乳酸菌を増やすためにはどうしたら良いのでしょうか? 方法としては3つあります。

腸内の乳酸菌を増やす3つの方法

  • 乳酸菌を食事を通じて摂取する
  • 腸内に存在する乳酸菌の増殖を促す栄養分・食品を摂取する
  • 悪玉菌の繁殖を抑制する食物繊維を積極的に摂取する

これらを可能な限り実行していくことが、腸内環境の改善に効果的と考えられます。

ここから3つの方法について、1つずつ詳しく見ていきます。

食品を食事を通じて摂取

乳酸菌を多く含む食品としてよく知られているのがヨーグルトなどの発酵食品です。

腸内の乳酸菌を増加させるのに、より効果的なのは、生きて腸まで届く乳酸菌が含まれているヨーグルト。

一方で、例えば、ヨーグルトには動物性脂肪も含まれており、これには悪玉菌の繁殖を逆に促してしまう可能性があります。

また乳酸菌飲料には糖分の含有量が多かったり、乳酸菌が多く含まれるキムチや漬物は塩分が高いなど、気になる点も。

乳酸菌が含まれているからと言って、どれか1つの食品を集中的に、大量に摂取することは別の健康問題を引き起こす可能性があります。

乳酸菌を多く含むさまざまな種類の食品を少量ずつバランスよく、毎日摂取するようにすることが重要です。

ヨーグルトで腸内環境を整える方法について、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にして下さい。

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乳酸菌の増殖を促す成分を摂取

乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌の栄養源の1つとしてよく知られているのが、オリゴ糖です。

オリゴ糖とは、単糖と呼ばれる分子構造的にそれ以上分解されない最小単位の糖が複数個結合したものと定義されています。

オリゴ糖がなぜ腸内の善玉菌の繁殖を促すのかと言うと、1つは胃や小腸で消化・吸収されることなく、大腸まで届く難消化性糖質だからです。

さらに、善玉菌の増殖は促すものの、悪玉菌の栄養源にはならず、善玉菌にだけ効果を発揮するというのもオリゴ糖の特徴です。

ただし、過剰摂取は身体にとって逆効果となる場合もあるため、適切な量のオリゴ糖を定期的に摂取することが大切です。

オリゴ糖の摂取方法については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にして下さい。

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悪玉菌の繁殖を抑える成分を摂取

食物繊維には、悪玉菌や腸内の有害物質を減少させる働きがあることが分かっています。

また、腸内で分解されると善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌の栄養素となってそれらの増殖を促進する効能があります。

さらに、食物繊維は胃液や消化酵素などにより消化、分解されにくく、糞便の量を増加させて腸を刺激する働きをするため、便秘を防ぎます。

便秘のように腸内に便がとどまっている状態では悪玉菌が繁殖しやすくなってしまうため排便をスムーズにすることが腸内環境を整えることにつながります。

食物繊維には不溶性食物繊維と、水溶性食物繊維の2種類があります。

不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の違い

・不溶性食物繊維:水に溶けにくく、逆に水分を吸収して膨張するため、便の量を増やして排便を刺激する効果があります。

・水溶性食物繊維:ぬめりのある粘性と高い保水性が特徴で、糖類・脂質等の吸収を抑制する働きがあります。

また、この水溶性食物繊維は腸内細菌によって分解される過程で短鎖脂肪酸を産生し、善玉菌の繁殖を促進するのです。

食物繊維を摂取する方法については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

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腸内環境を整えるサプリ

乳酸菌を増やすには、毎日の食事の中でできるだけ乳酸品を含む食品を摂取したり、乳酸菌が増殖しやすい腸内環境の維持を心がけることが重要です。

しかし、忙しくて食事を工夫する余裕が無い方もいらっしゃると思います。

そんな方には、乳酸菌をサプリメントや乳酸菌飲料で摂取するという方法がオススメです。

腸内環境を整えるサプリの選び方

乳酸菌サプリメントにはさまざまな種類のものがありますが、製品ごとに特徴がありますので注意して選ぶ必要があります。

例えば、胃や小腸で消化・分解されずに、腸まで届くものなのかどうか、などを選ぶ基準とすることも出来るでしょう。

また、ヤクルトなどの乳酸菌飲料にも、腸内の乳酸菌の量を直接増加させて腸内環境を整える効果があります。

腸内環境を整える乳酸菌サプリメントに関しては、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

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サプリメントは、気軽に摂取できる反面、頼りすぎると食事を疎かにしてしまう可能性などもあります。

腸内環境を整えるのに最も効果的なのは、普段の食事を工夫することです。

健康食品の中にも、乳酸菌を増加させたり、ビフィズス菌を増加させたりする効果がある製品があります。

腸内環境を整える健康食品については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

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まとめ

今回は、腸内環境を整えるために有効な乳酸菌についてご紹介しました。

乳酸菌は、腸内で有機酸を生成することで、悪玉菌の増殖を防いでいます。

また、ビタミンを生成する作用もあり、健康に生活する上でとても重要です。

乳酸菌は、毎日の食事によって増やしたり、活動を活性化させたりできます。

乳酸菌を含む食材、健康食品、飲料、サプリメントを積極的に摂取し、腸内環境を整えて健康的な毎日を送ってください。

この記事の筆者

腸内細菌博士
1977年生まれ。京都大学・大学院にて分子細胞生物学を専攻。腸による脂質代謝や栄養吸収を細胞レベルで研究、また腸に関連する疾患の予防、治療方法の基礎研究に従事。

ほか、腸の働きと関連性のある自律神経系や免疫システムについては、現在も米国科学雑誌等で最新研究動向をウォッチ中。現在、米国にてMBA留学中。

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