腸内環境を整えると得られる効果

腸内環境を悪い状態のまま放置して、軽い軟便や便秘の状態が続いても、それは緊急の対応が必要な重い病気ではないです。

しかし、腸内環境を悪い状態で放置しておくことは、実は大腸がんなど重い病気を引き起こすリスクを高めてしまうのです。

逆にこの状態を放置せず腸内環境を改善することは、健康で充実した私たちの生活に良い効果をもたらします。

そこで、今回は腸内環境を良い状態に保つことで得られる効果についてご紹介します。

腸内環境が悪い状態とは

みんさんは、便通が悪い、軟便が続く、あるいは胃もたれや胸やけなどに伴う食欲不振など、「腸内環境が悪くなってるかも」と感じる瞬間はありませんか?

多くのみなさんが一度や二度は経験したことがあるのではないかと思います。

では、腸内環境が悪いと感じる時、私たちの身体の腸の内部は一体どのようになっているのでしょうか?

悪玉菌が増殖している

私たちの腸内には腸内細菌と呼ばれる細菌が生息しており、この腸内細菌の状態により腸内環境の良し悪しは左右されます。

腸内細菌には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌と大きく分けて3種類の細菌があり、それぞれ20:10:70の割合で存在している状態が理想的な状態とされています。

これに対して悪玉菌の存在割合が増加し、善玉菌の割合が相対的に減少してしまった状態が、いわゆる「腸内環境が悪い」、改善が必要な状態と言われています。

悪玉菌が増殖する原因とは?

腸内における悪玉菌の増殖というのは意外と簡単に生じてしまいます。

例えば生活リズムが乱れて食事の時間が不規則になったり、睡眠時間が短く寝不足が続いたり、忙しく精神的なストレスを感じることが増える要因になります。

また、タンパク質や脂質の摂り過ぎなどでも、悪玉菌は増殖しやすくなってしまいます。

悪玉菌が増殖する原因については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

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悪い状態を放置するリスク

一般的に腸内環境とは大腸内部の環境を指しますが、腸内環境が悪くなると大腸そのものの機能が低下します。

大腸は、胃や小腸で消化・吸収された後の食物から水分を吸収、糞便を作り出す役割を担っています。

この大腸の機能が低下すると排便が滞ったり(便秘)、あるいは逆に軟便・下痢といった症状が引き起こされるのです。

この程度の症状では、早急に対応する必要がなく軽視されがちですが、大腸の機能が低下した状態が続くと、私たちの身体に以下のようなリスクが生じます。

腸内環境の悪化で生じるリスク

  • 大腸がん
  • うつ病など精神疾患
  • 肌荒れ、吹き出物、抜け毛

このように、腸内環境が悪化すると、肌荒れなど比較的軽いものから、大腸がんなど重大リスクまで幅広い影響があります。

ここからは、これらのリスクについて、1つずつ詳しく見ていきます。

①大腸がんを発症する

大腸がんは、大腸内部の細胞が、がん化することで引き起こされるますが、この細胞のがん化には、腸内環境の状態が関係していると考えられています。

例えば腸内環境が悪化して便秘の症状が続くと、排便されない便が大腸内に留まる時間が長くなります。

この便は大腸内で腐敗するなどして悪玉菌の増殖を促すエサとなってしまい、腸内環境が悪化、改善されない状態が続いてしまうのです。

また、腸内環境の乱れの根本原因の1つには食習慣が考えられています。

特に肉類や揚げ物を中心とした食事が続くと、動物性タンパク質や動物性脂肪の摂取量が増加します。

これらは消化されにくい食品のために大腸で便が滞ってしまい、腸内環境の悪化を招く要因と考えられています。

この時、脂肪を消化する胆汁酸の量も同時に増えるため、この胆汁酸も腸内に長くとどまり、これが大腸内部の細胞の遺伝子に作用してがん化させている可能性があるのです。

②うつ病など精神疾患になる

大腸と精神疾患というのはまったく関係が無いように思われるのですが、実はそうではありません。

これは神経伝達物質の1つであるセロトニンが大腸で産生されているためです。

セロトニンは脳内で作用して、幸せな気分や満足感、安心感といった感情、精神状態を生み出すのに関与している物質です。

そのため、このセロトニンの分泌量が低下すると、意欲の減退や、ひどい場合はうつ病などの精神疾患を引き起こす可能性があります。

また、大腸は自律神経とも相互に影響しあっており、腸内環境の悪化で大腸の機能低下すると、自律神経失調症などの疾患を引き起こす可能性もあります。

これら大腸に起因する精神面の不調は、食欲減退や運動意欲の減退、睡眠の質の低下などを引き起こすケースもあります。

そういった場合には腸内環境はさらに悪化することになり、なかなか正常な腸内環境に戻せない悪循環に陥るリスクもあるのです。

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③肌荒れが悪化する

腸内環境が悪く大腸の正常な機能が失われると、大腸内に糞便などの腐敗物質が蓄積することになります。

これらの腐敗物質は悪玉菌の増殖を招くばかりか、悪玉菌が有害な物質や、アンモニアやフェノールといった悪臭のあるガスを生み出す要因となります。

腸内で生み出された有害物質やガスは、腸内にとどまらず、血流を介して全身へと運ばれてしまいます。

これが皮膚に至ると肌荒れや吹き出物、体臭を引き起こしたり、また頭皮に至るとかゆみやフケの原因になったり、ひどい場合は抜け毛などの症状を引き起こすのです。

大腸の機能低下は腸だけの問題にとどまらず、肌や髪質、体臭などに影響を及ぼすリスクもあり、できるだけ早期に腸内環境を改善した方が良いというのはこういったリスクがあるためです。

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改善によって得られる効果

腸内環境が悪い状態のまま、それを放置することはさまざまな疾患、身体への悪影響のリスクを高めます。

しかしながら、逆に言えば、早期に腸内環境を改善することは必ず私たちの生活に良い効果をもたらすと言えます。

腸内環境を改善したり、良い状態に維持することで、さまざまな健康上の効果を期待できますが、代表的なものを以下に挙げます。

①食事が美味しく、豊かに!

腸内環境が改善され、大腸が正常に機能することでまず第一に期待できることが、排便が正常化する、つまりお通じが安定化することです。

便秘や下痢といった身体の不調から解放され、毎日健康的な便が出ることで、食欲の回復や、食事を美味しく感じられるといった効果を期待できるのです。

また腸内環境を良い状態に維持するためには、1日3食の食事を決まった時間に、また食事量もある程度一定にするのが効果的です。

ですので、このように腸内環境を意識した食生活にすることで、生活リズム全体が安定化するというのも得られる効果の1つと考えられます。

②やる気が出て、前向に!

大腸の機能が回復することで脳内ホルモンの1つであるセロトニンの産生が安定化します。

すると、気持ちが前向きになったり、精神面での健康状態も向上する効果を期待できます。

また、腸内環境は免疫機構にも深い関連があるため、腸内環境の正常化は免疫力の向上という効果ももたらします。

免疫力が向上し、外来の細菌やウィルスへの抵抗力が高まれば、風邪などの病気に罹りにくい身体になります。

これも毎日のやる気を高めたり維持するのに効果的なことと言えるでしょう。

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③美肌やダイエット効果も!

腸内環境が改善して悪玉菌の数が減少すれば、当然有害物質や有害ガスの産生量も減少します。

ですので、肌荒れや吹き出物の心配も減少し、健康的な肌の維持に効果を発揮すると考えられます。

美肌や髪の艶などを意識されている方であればなおさら、腸内環境をできるだけ良い状態に保つことが美肌効果につながることを覚えていただきたいです。

また、毎日の排便が安定化することで、腸内に老廃物が蓄積することが減り、自然と体重が落ちるためダイエットの効果があるとも言えそうです。

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改善に効果がある3つの習慣

腸内環境の改善が身体にさまざまな良い効果をもたらすことはお分かりいただけましたか?

最後に、腸内環境の改善に効果的な3つの生活習慣をご紹介します。

良い腸内環境の維持に効果的な生活習慣を身に付け、健康的な毎日を送りたいですね。

(1)食習慣-動物性の脂肪やタンパク質を避け、善玉菌や食物繊維を欠かさない食生活を!

動物性脂肪やタンパク質は胃や腸で消化・分解されにくく、大腸内にとどまる時間が長くなり、排便されにくい食べ物です。

これらは悪玉菌の増殖を促進してしまうため、肉類や揚げ物などをできるだけ避ける食習慣は効果があると考えられます。

また、逆に善玉菌を多く含む食品である乳製品や、発酵食品を積極的に摂取することは、腸内の善玉菌を増やすことになり効果的です。

さらに食物繊維は糞便の量を増加させて、排便を刺激する働きがあるので、便秘になりづらい身体づくりに欠かせない食品です。

このような腸内環境を意識した食習慣を身に付けることは、腸内環境を良い状態に保つのに非常に効果があると言えます。

食事によって腸内環境を改善する方法については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

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(2)運動習慣-定期的な運動、身体の筋力をできるだけ維持するような習慣を!

人の筋力は加齢によって徐々に衰えていくものです。

私たちの身体の筋力、特に下腹部の筋力の衰えは、そのまま排便する力の衰えにつながります。

排便する力が落ちるということは、大腸内に糞便が滞る時間が長くなるということであり、腸内環境を悪くする要因になります。

こうならないためにも、毎日の生活の中で一定の運動習慣を身に付けることは腸内環境の維持・改善に効果があると言えるのです。

また、運動によって身体に適度な疲労感を与えられれば、睡眠の質が高まる効果も期待できます。

睡眠中にしっかり身体を休めることは、大腸などの消化器官を休息させることにもつながり、腸内環境の維持・改善には効果的なのです。

運動によって腸内環境を整える方法については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

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(3)休息・リラックス習慣-忙しい毎日の中でも、自分なりにリラックスするための工夫を!

お仕事をされている方の中には、毎日忙しくてなかなかゆっくり休息したり、リラックスするための時間が取れないという方がいらっしゃるでしょう。

大腸のぜん動運動は自律神経のうち、副交感神経と密接な関連がありますので、こういった生活習慣は、腸内環境にとって悪影響です。

休息時やリラックス時に作用する副交感神経が正常に機能しないと、大腸のぜん動運動に悪影響を及ぼし、腸内環境の悪化を引き起こしかねないのです。

逆に、時間的には短くともしっかりリラックスできる時間や空間を自分なりに確保できていると、副交感神経を働かせることができ、腸内環境の改善にも良い効果を期待できます。

例えば、お気に入りのアロマや音楽など、できるだけリラックスする=副交感神経を最大限機能させるための自分なりの工夫を身に付け、日々の生活の中に取り入れてみてください。

腸内環境を整える生活習慣については、以下の記事で紹介していますので、参考にしてください。

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まとめ

腸内環境の改善により期待できる効果や、効果的な腸内環境の維持・改善方法について、お分かりいただけましたか?

腸内環境が悪化している状態を放置すると、健康上の様々なリスクが増加します。

逆に、腸内環境を日頃から整えておけば、健康な毎日を過ごせる可能性が増すのです。

今回ご紹介した、腸内環境を整えることで得られる効果を実感するために、普段の食事や生活を見直すことをおすすめします。

腸内環境に優しい食習慣と生活習慣を身に付け、効果的に健康な身体づくりに励んでみてくださいね。

この記事の筆者

腸内細菌博士
1977年生まれ。京都大学・大学院にて分子細胞生物学を専攻。腸による脂質代謝や栄養吸収を細胞レベルで研究、また腸に関連する疾患の予防、治療方法の基礎研究に従事。

ほか、腸の働きと関連性のある自律神経系や免疫システムについては、現在も米国科学雑誌等で最新研究動向をウォッチ中。現在、米国にてMBA留学中。

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