美肌の始まりは腸内環境の改善から
美肌の始まりは腸内環境の改善から
年齢が上がるにつれて肌の状態も変わってきます。特に女性は30代からエイジングのサインが出始めますよね。
なかなか顔から疲れが取れなかったり、肌のたるみが気になり始めたり、など肌についての悩みが何かと増えていきます。
実際に多くのみなさんが抱える肌の悩みとして多いのは、美肌の大敵である「肌のくすみ」。加齢による影響は仕方がないとは言え、少しでも軽減させて美肌を維持したいもの。
実はこの肌の状態は腸内環境の改善によって変えることもできるのです。
せっかくお金をかけてスキンケアをしているなら、腸内環境もキレイにして身体の内側から美肌を目指さなくてはもったい無いのです!
記事の目次
腸内環境と美肌の関係
腸は「第二の脳」と呼ばれるほど複雑で多様な機能を担った重要な器官。
実は私たちの免疫力であったり、神経ホルモンの産生にも腸が関連しているのですが、何と言っても重要な腸の役割と言えば、栄養素の吸収と不要物の排出(排便)です。
腸内環境が悪化して腸が正常に機能しなくなると便秘のように排便が滞ることになり、体外へうまく排出されなくなった老廃物からは有害な物質やガスが発生します。
これら腸内で発生する有害な毒素が、お肌にとって危険なのです。腸内で生成した有害物質は腸壁から吸収され、血液に取り込まれて全身に運ばれます。
私たちの身体はどうにかして有害物質を体外へ追いやろうとしますから、皮膚や口からも排出しようとして、この時に肌トラブルや体臭、口臭などが引き起こされてしまうのです。
肌の調子を保つためにはスキンケアだけでは不十分で、腸内環境や腸内細菌のバランスにも気を配らなければならないのは、こうしたメカニズムがあるからなのです。
お肌に優しい「良い腸内環境」とは?
腸内は約100兆個以上の腸内細菌が存在していると言われており、その種類は1000種類以上にも及ぶとも言われています。
腸内細菌はその働きから大きく3つに分けて考えることができ、それぞれ善玉菌、悪玉菌、日和見菌と呼ばれています。
この中でもその名の通り、悪玉菌が腸内の腐敗物や老廃物を分解して有害毒素を発生させる菌。
とは言え、悪玉菌がまったく存在しないと私たちの身体には別の問題が起きてしまいます。
腸内細菌の中で善玉菌、悪玉菌、日和見菌がそれぞれ2割、1割、7割を占めている状態が理想的な腸内環境とされています。
この腸内細菌の絶妙なバランスを保つことが良い腸内環境にとって必要で、美肌の維持や肌トラブルの防止にも重要なことなのです。
腸内細菌のバランスは、ちょっとした食生活の変化や精神的ストレス、睡眠不足によって崩されてしまうため、日々の生活の中でのケアが非常に大切なのです。
腸内環境の悪化により起きる肌トラブル「肌のくすみ」
くすみとは、肌がどんよりとくすんで見える、透明感・明るさがない状態をいいます。
自分の肌がくすんでいるかどうかは、顔と首の色に違いがないか、おでこと髪の生え際の色に違いがないかを見てみるのが簡単なチェック方法。
一言で肌のくすみと言っても、症状や原因はさまざま。
例えば、肌が青白く不健康そうに見えてしまうようなくすみは、原因として皮膚の血行不良や新陳代謝の乱れが考えられます。
日常のストレスや緊張、睡眠不足などによって血行が妨げられ、結果的に美肌を青白くくすんだ肌へ変えてしまうのです。
逆に、肌を灰色に近い暗くくすんだ状態にしてしまうのは、乾燥が原因。
かさついた肌で写真を撮ると、薄暗く不健康な肌に写ってしまいます。
美肌には保湿が重要と言われるのはこのためです。
そして、肌が黄色っぽくくすむ症状、いわゆる「黄ぐすみ」は女性の多くが心を悩ませる肌のくすみの一種で、美しく健康的な肌を透明感がない、黄色みがかった肌にしてしまいます。
この黄ぐすみこそ、腸内環境の悪化が原因で起きるのです。
腸内環境の悪化が引き起こす肌の「黄ぐすみ」とは?
皮膚の表面は上が表皮、下が真皮と呼ばれる2層でできており、この直下には血液が流れ、肌に必要な栄養素を表皮や真皮の細胞に届けています。
血液を通して肌の細胞に運ばれる栄養素の一つとして、細胞のエネルギー源となる糖分があります。
実はこの糖分が黄ぐすみの原因です。
適量の糖分が肌の細胞に運ばれていれば美肌を保つことができます。
しかし、余剰の糖分が肌細胞に蓄積すると、糖分が真皮内のコラーゲン(タンパク質)と結合しAGEsという黄褐色の物質に変化してしまうのです。
この糖分をコントロールするには、糖質の過剰摂取を控えることも大切ですが、膵臓から分泌されるインスリンの量が鍵を握っています。
インスリンが正常に分泌されていれば、余剰な糖分は発生しにくいのですが、インスリンの分泌量が減少すると体内の糖分の量が増加します。
実は腸内環境はこのインスリンの分泌にも関与しているのです。
腸で産生される消化管ホルモンには膵臓からのインスリン分泌を促す役割があるのですが、腸内環境が悪化するとこの消化管ホルモンの生産が減少し、結果的にインスリンの分泌量を低下させてしまいます。
腸内環境が悪化すると美肌の大敵である「黄ぐすみ」を引き起こすのは、腸内環境がインスリンの分泌にも関与するメカニズムがあるためなのです。
インスリンの分泌量は加齢とともに減少していくからこそ、腸内環境を整え、インスリン分泌の妨げとならないようにすることは美肌のためにも効果的。
またインスリンは糖尿病などの疾患とも関連があるため、腸内環境を良い状態に保つことは美肌のためだけでなく、糖尿病などの疾患を予防する意味でも重要なのです。
肌のくすみを抑え、美肌を保つためにできること~美肌を保つための食生活~
皮膚の血行を良くしたり、乾燥を防ぐために保湿を心がけるなど、美肌を保つためにできることはいろいろとあります。
その中でも腸内環境を整え、良い状態に保つことは、「黄ぐすみ」を防ぐ上でも非常に重要なのです。
それでは腸内細菌のバランスを良い状態に保ち、インスリンの分泌を促進、肌細胞に余剰な糖分を蓄積させないようにするためには何が一番大切でしょうか?
それにはまず、普段の食生活を腸内環境に優しいものにする必要があります。
(1)善玉菌が含まれる食品を摂取する
腸内環境を良い状態に保つためには、腸内細菌の1つである善玉菌が絶えず腸内に一定量存在するように維持することが重要です。
善玉菌はその7割が乳酸菌とビフィズス菌と呼ばれる細菌で構成されており、これらの菌を含む食品を積極的に摂取することで、腸内の善玉菌の量を維持する効果を見込めます。
乳酸菌やビフィズス菌が多く含まれている食品の代表格がヨーグルトや乳酸菌飲料。
毎日の朝食など、1日に1回は取り入れていきたい食品です。
また、ぬか漬けやキムチ、納豆などの発酵食品にも多く乳酸菌が含まれており、これらの食品を摂取することも美肌に効果的と言えます。
(2)善玉菌の増殖を促す食品を摂取する
腸内の善玉菌の量を保つために、腸内に存在する善玉菌の増殖を促すというのも効果的な考え方です。
善玉菌の増殖を促す食品として代表的なものは、オリゴ糖。
オリゴ糖を多く含む食材としては、バナナや大豆、アスパラ、玉ねぎ、ごぼう、蜂蜜などが挙げられます。
これらの食品を積極的に摂取することで善玉菌の増殖を促し、腸内細菌のバランスを良い状態に保つことを期待できます。
(3)悪玉菌を増殖させないような食品を摂取する
腸内細菌のうち悪玉菌が増殖し、腸内細菌のバランスが崩れた状態を防ぐためには、悪玉菌を増殖させないようにすることが重要。
悪玉菌は、腸内に残った未消化物や腐敗物質をエサにして増殖するため、腸内をできるだけキレイな状態に保つことが悪玉菌の繁殖を防ぐために必要です。
そしてそれには食物繊維の摂取が非常に有効なのです。
食物繊維は排便を促し、腸内環境の悪性物質を体外に排出させるのに効果的で、具体的には昆布、わかめなどの海藻類や、ごぼう、里芋などの根菜類、豆類、果物などの食品に豊富に含まれています。
これらの食物繊維を積極的に摂取することで、毎日の排便をスムーズにして、便秘のような症状を防ぎ、腸内環境をキレイな状態に保つ効果を期待できます。
美肌を保つためにはスキンケアだけでは不十分、ということを理解いただけたでしょうか?
健康的で美しい肌を維持するには、腸内環境を良い状態に維持すること、つまり毎日の食事にもケアをして体の内側からキレイにすることが大切なのです。
しかも、腸内環境のケアはスキンケアなどとは異なり、お金もかけずに日々の食事のちょっとした工夫からできるもの。
早速今日から取り入れて、美肌の維持に役立ててくださいね!
この記事の筆者
腸内細菌博士
1977年生まれ。京都大学・大学院にて分子細胞生物学を専攻。腸による脂質代謝や栄養吸収を細胞レベルで研究、また腸に関連する疾患の予防、治療方法の基礎研究に従事。
ほか、腸の働きと関連性のある自律神経系や免疫システムについては、現在も米国科学雑誌等で最新研究動向をウォッチ中。現在、米国にてMBA留学中。