おなかが張る・ガスがたまるの原因は炭水化物?
おならが出そうで出ない時のおなかの張り(腹部膨満感)は、臭いや音に次いで悩ましい問題ですね。
便秘や食べ物が関係していると言われますが、近年話題になっているダイエット方法「炭水化物抜きダイエット」も影響しているかも知れません。
炭水化物は主食であるご飯やパンにも含まれるため、付き合い方を良く見極める必要があります。
この記事では、炭水化物がガスやおならにどう関わってくるのかについてみていくとともに、食事面以外からも解消法をご紹介します。
記事の目次
ガスが溜まって苦しい痛い・その原因
ガスの悩みと言えば、以下の3つに大別されます。
- おならの量(回数)
- おならの臭い
- おならが出そうで出ない「ガス溜まり」
もちろん、人前でおならをしたくない、我慢出来ないという悩みもありますが、量(回数)をコントロールできれば、悩み自体は軽減するはずです。
人間の体内のガスは、10%は腸内の食物が腸内細菌によって発酵したり腐敗する際に発生したガスです。そして残りの90%は何と、口から取り込まれた空気がもとになっています。
後者の「空気」については、食事の際の早食いとの関係が指摘されています。また、ストレスによってガスが発生しやすくなる過敏性腸症候群の可能性も見逃せません。
原因については様々ですが、腸本来の働きが鈍っている時にに、ガスを排出することができず、張りや痛みを感じるようになります。
さらに食事性の原因の場合、実は炭水化物の摂取が関係している可能性もあるのです。
炭水化物がガスをふやす?
一般的に肉類を好んで食べる人のおならは臭いことが知られていますが、炭水化物についてはどうなのでしょうか。
炭水化物で注目したいのは食物繊維含有量
炭水化物にも含まれる食物繊維
炭水化物と言うと、ご飯やパン、パスタなどの「主食」というイメージですが、イモや豆、フルーツにも炭水化物は含まれます。
ここで注目していきたいのは炭水化物中の「食物繊維」含有量です。特に穀物やイモ類には多くの食物繊維が含まれます。この食物繊維がガスに関係してきます。
腸内細菌が活発に働くことでガスが発生
穀物やイモ類などの食物繊維の多い食物は、腸内で善玉菌のエサとなって腸の運動を活発にします。さらにメタンガスや二酸化炭素を大量に発生させます。
焼き芋(サツマイモ)を食べるとおならが出やすいと言うのは、このためです。穀物ですと玄米や麦(大麦など)、ライ麦や全粒粉のパンなどの食物繊維が豊富です。
「玄米を食べると、お腹が張る感じがする」という話が良く知られています。特に穀物は主食であるため、口にする機会が多く、ガス溜まりへの影響は大きくなります。
ただし、白米や、食パンなどは、精製の過程で食物繊維がかなり減っているため、ガス溜まりに関しては気にしなくても良いでしょう。
いずれにしても、炭水化物によって増えたおならの臭いは無臭に近く、健康的なおならと言えます。
仕事などで人前に出る場合は、おならの回数や量自体を減らすという目的で、前日~直前の食物繊維の摂取量を調整するなどの工夫をしてみましょう。
炭水化物とタンパク質ではおならの臭いが違う
一方で、動物性のタンパク質は腸内で悪玉菌の活動を活発化させるため、アンモニア・硫化水素・スカトールと言った臭いのキツいガスが発生します。
臭いに配慮するなら、同じタンパク質でも豆>魚>肉の順に腸内環境にやさしくなるので、食事の献立に工夫をしても良いかも知れません。
しかし、炭水化物もタンパク質も人間の体を維持する上で必要な栄養素です。極端に控えるのが良いわけではないことを理解しておいてください。
その上で、ガス溜まりや便秘解消を目的として、一時的に食物繊維の摂取を減らすという考えもあり、これについては「ガス溜まりの解消法」で後述していきます。
炭水化物ぬきもガスをふやす?
肉などの動物性のタンパク質を摂りすぎるとおならが臭くなることはすでに述べてきましたが、その背景に「糖質制限ダイエット」が関係していることもあります。
糖質のもととなる炭水化物は、ダイエットの際には控えめにしたいもの。さらに近年では、炭水化物を「控える」ではなく「抜く」というダイエット方法も世の中に出てきました。
糖質制限ダイエットの多くは、単に炭水化物を抜くだけでなく、タンパク質の摂取を推奨しています。タンパク質は筋肉のもととなりますので、基礎代謝を上げ、ダイエットに繋がるからです。
しかし、主食である炭水化物を取らない分、動物性タンパク質過多に陥ると、おならが臭くなります。更にタンパク質をエサとする悪玉菌増殖のため、腸内環境が悪化し、ガス自体が排出されにくくなる可能性もあるのです。
炭水化物カットによる糖質制限をする際は、合わせて食物繊維を摂って便秘によるガスだまりを解消したり、腸内環境によいとされる善玉菌(ヨーグルトなどの発酵食品等)を摂ることを心がけましょう。
関連記事では、発酵食品の例や、また、合わせて摂ると良い食材も紹介しています。
ガスだまりの解消法(食事編)
腸内環境に限らず、体づくりの基本は「運動・栄養・休養」の3本柱をバランス良くとりいれることにあります。ここでは「栄養」の中でも炭水化物に焦点をあててガスとの関係をみていきます。
ダイエットのためには何かと敬遠されがちな炭水化物ですが、便秘やガス溜まりに悩んでいる人には、必ずしも悪者と決めつけずに摂っていただきたいです。
「適度に炭水化物を摂ることでガス溜まり対策になる」という説が、日本テレビの世界一受けたい授業「お腹の張りの原因「腸内ガス」解消法」(2015年8月15日)で紹介されました。
番組内では、「炭水化物は便となり排出される際に腸内ガスも押し出してくれる」ため、「便秘やガス溜まりの際にはおかゆやうどんなどがおすすめ」と紹介されました。
これは一体どういうことなのでしょうか。
炭水化物の摂取がガス溜まりを救う?
解説を担当された東邦大学医療センター大森病院総合診療科の瓜田純久氏は著書のなかでも、便秘解消において炭水化物を摂るタイミングが大切であることに言及しています。
腸内で発生するガスの量が増え、過剰に溜まると、おなかが張る不快感(腹部膨満感)や腹痛の原因になり、内容物を先へ送るぜん動運動や消化吸収の働きが妨げられます。
結果便通異常を引き起こし、便秘→ガス溜まり→さらに便秘の悪循環を引き起こすと考えられます。この状態で不溶性食物繊維を摂っても、便は固くなり便秘が悪化するのです。
瓜田氏によると「便秘中に大切なことは胃腸にかかる負担を減らし、働きをよくしていくこと」で、消化に良い「炭水化物や水分」を摂ることがおすすめとのことです。
おかゆやうどんは、炭水化物の中では食物繊維が少なめで消化に良く、水分補給もできることから、番組内で瓜田氏自身が実践している「ガス溜まり対策法」として紹介されたというわけです。
ガス溜まり対策には食べる順番も大切
さらに同氏は便秘解消や腸活テクニックをその著書で紹介されており、便秘解消を目的とした食事では、食べる順番を工夫することが大切としています。
一般的にダイエット中の食べる順番としては「食物繊維→タンパク質→最も血糖値が上がりやすい糖質を多く含むご飯などの主食を最後に」という方法が推奨されます。
しかしこれは言わば、「消化吸収されにくい順番」ですので「血糖値を上げすぎない」ことには有効でも、現在便秘で苦しんでいる人にはおすすめできない方法なのです。
先にも触れましたが、「便秘中は胃腸にかかる負担を減らし、働きをよくしていくこと」ですのでむしろ食べる順は逆にして、「炭水化物→タンパク質→少量の食物繊維」が良いとのことです。
(※ただしこの方法は、糖尿病患者さんにはおすすめできません。)
便秘解消が、腸内環境の悪循環をたち、ガス溜まり解消のきっかけのもなり得ますので、ガスと便秘に悩んでいる方は一度試してみる価値がありそうです。
ガスだまりの解消法(食事以外)
炭水化物がおなかの張りに影響することについて述べてきましたが、食事(栄養)面と並行して、運動や休養面で工夫をすることをおすすめします。
運動
ヨガの「ガス抜きのポーズ」
数ある運動の中でも、効果を得られやすいのがヨガの「ガスぬきのポーズ」です。物理的におなかを圧迫することもありますが、複式呼吸で行うのがポイントです。
- 仰向けになって、腕で両膝を抱きかかえるようにして引き寄せる。首に痛みが無ければ頭を上げて膝を覗き込むようにする。
- 吐く時はおなかを絞って、膝を更に引き寄せるようにする。吸う時はおなかを大きく膨らませる(自然に膝が少し遠ざかる)
- ゆったりとした呼吸で5呼吸ほどキープする(30秒が目安)
- 1~3を繰り返す。(片膝ずつ行ってもOK)
- 数回繰り返した後、手足を伸ばして、仰向けのままリラックスする
腹式呼吸について
呼吸は肺に入るものですので、「腹式呼吸」と言っても腸に空気が入るわけではありません。
「吸う吐く」を通常の呼吸よりお腹を意識して、大きく深く行うことで、内臓全体をマッサージする効果が期待できます。
ヨガは通常、鼻呼吸で行いますが、慣れないなら吐く時は口から吐いても良いでしょう。
膝でお腹を押していた状態から開放され、腸が動き出すように感じられると成功と言えます。
また複式呼吸そのものにも腸を内部からマッサージする効果がありますので、椅子に座った状態での腹式呼吸も生活に取り入れてみましょう。
休養
人間の体は、自律神経のもとで特定の生理現象を起こしています。この自律神経が乱れることで腸内環境も乱れ、ひいてはガスが過剰に発生したり、排出できないなどの症状に結びつくことがあります。
その乱れを解消するには、休養が必要です。休養…というとピンと来ないと思いますが、ここで言う休養とは早寝早起きや睡眠時間の確保、またはストレス解消のための時間を摂ることなどです。
サプリメントやお薬
お腹の張りやガスが溜まるのを解消するために、食事や運動・休養についても工夫してみたけど、成果が現れないという場合は、いよいよサプリメントやお薬に頼ることになります。
効果としては、サプリメント<整腸剤<お薬(消泡剤を含む)<病院での処方薬の順で出やすくなります。
サプリメントや整腸剤
主に腸内環境を整えることを目的として、乳酸菌などの善玉菌を摂取することに優れています。善玉菌を効率よく取り入れることで、腸内環境を改善し、ガス溜まり解消に導きます。(ただし以後述の消泡剤を含むお薬と比べると、効果は穏やかとなります。)
サプリメントと整腸剤の違いは、簡単に言うと健康食品か医薬品かの違いになります。関連記事では、サプリメントと整腸剤の違いやメリット・デメリットについて詳しく解説しています。
消泡剤を含む医薬品
消泡剤は、腸内に既に発生したガスをつぶすものです。「ガスピタン」(小林製薬)に代表されます。
消泡剤を含む医薬品は、複数のメーカーから出されています。消化酵素や乳酸菌を配合することで、ガスの解消とともに過剰なガスの発生を抑えることが期待できます。
ガスがたまる病気
おなかが張る・ガス溜まりについて、炭水化物の摂取の仕方が鍵となっているケースについて見てきました。
ただし、おなかの張りが長期間に渡ったり、痛みを伴う場合には、他の病気が隠れている可能性がありますので、自己判断に頼り切らないようにしましょう。
ひとくちにガスと言っても、この限りではありませんが、大きく分けて下の3つに分けられます。心当たりがある場合は、早期に受信しましょう。
- 婦人科系(卵巣腫瘍 子宮筋腫 など)
- 消化器系(巨大結腸症 腸閉塞 大腸がん など)
- ストレス性(呑気症・過敏性腸症候群 など)
婦人科系
妊娠すると子宮を守るために黄体ホルモンが働くのですが、同時に胃腸の働きを弱める作用があるため、妊娠初期に便秘になりやすく・ガスが溜まりやすいと言った症状が出やすくなります。
また、妊娠していなくても女性は生理周期に応じて、便秘になりやすく・同時にガスが溜まりやすい時期があります。
生理周期による一過性のものですので、女性ホルモンのバランスが原因の場合は、通常は生理開始とともに解消されます。
しかし、長引くようなら他に原因があるかも知れません。卵巣腫瘍や子宮筋腫などがおなかの張りやガスに影響していることがあります。
これらの器官は腸に近いことから、腫瘍が大きくなると腸を圧迫して、腸内環境に影響を与えるからです。
初期は自覚症状がないケースが多く、検査で見つかることが多いので、婦人科の定期検診を欠かさないようにしましょう。
消化器系
お腹にガスが溜まるという自覚症状があっても、それが大きな病気だとはなかなか考えられないものです。しかし、長引くようなら以下の病気の可能性も考えてみましょう。
- 大腸がん
- 大腸憩室(腸壁の一部に袋状に飛び出したポケットができる)
- 腸閉塞
いずれも初期には痛みを伴わないケースがあり、腹部の膨満感が先に自覚症状として出ることがあります。
ストレス性
- 過敏性腸症候群(便秘型・下痢型・混合型・ガス型があります)
- 呑気症(食事の際などに空気を過剰に飲み込んでしまう)
過敏性腸症候群はストレスを感じた時に下痢を起こす病気として知られていますが、ガス型もあります。
また、呑気症は早食いやストレスとの関係も指摘されています。
最後に
炭水化物は主食であるため、口にする機会が多いものです。
食べる機会が多い分、「制限する・または玄米や麦に置き換える」ということでダイエットや健康増進効果が得られやすいのです。
一方でおなかの張りやガス溜まりに悩む人は、食物繊維を摂りすぎたり、タンパク質に偏りすぎたりしないよう、食事を工夫してみましょう。
口にする機会が多い食品であるからこそ、付き合い方を自分の腸内環境に合わせてよく見極めたいものです。
参考
世界一受けたい授業 「お腹の張りの原因「腸内ガス」解消法」 http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/150815/03.html
「便秘を治す腸活テクニック」 瓜田 純久氏 著 /マキノ出版