おならを徹底解明しました

あなたは、おならにどんなイメージを持っていますか?

まあ、そんなに良いイメージではないでしょうね。

  • 臭い
  • 音がまぬけ
  • だらしない

なんてところでしょうか。

人前で思わずおならをしてしまった失敗経験のある人は、おならを「呪いの対象」とさえ考えているでしょう。

おならをしてしまったのが相手に気づかれてしまう場合、2通りの気付かれ方がありますよね。

一つは「ぷ~う」という音、もう一つは臭いで気づかれる場合です。

腸内で作られるガスは腸内細菌が作る

以下のページではおならの大半が食事中に口からとりこまれた空気であると云いましたが、残りはどこから来るのでしょうか?

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【専門家が答える】おなら,ガスが止まらない!原因と対処法について

こんにちは。 私は1990年初めから20年間ほど腸内細菌と腸の粘膜免疫に関して研究してきました。 腸とおならは切っても切り離せないものです。腸内細菌の働きがおならに大きくかかわってきます。...

【専門家が答える】おなら,ガスが止まらない!原因と対処法について

残りは腸に住んでいる腸内細菌が作ります。

おならの臭いの原因は、この腸内細菌が作るガスによるものなんです。

腸内細菌のことをよく知っておくとおならの臭いを防げる場合があります。

腸内細菌の種類によっておならの臭いが決まる!

一人の人間の腸内には、約100種類以上、100兆個という膨大な数の腸内細菌が住んでいます。

大便の重さの三分の一から半分が、腸内細菌またはその死骸と云ったら、その膨大さがイメージできるでしょうか。

膨大な数の腸内細菌が私たちの腸の中には住んでいて、腸内環境を常に一定に保っています。

私たち人間と腸内細菌とは、「共生」の関係にあって、お互いに助け合って生きています。

たとえば、腸内細菌の栄養は私たちが食べた食物から提供されています。

一方、腸内細菌によって人間が消化できない食物繊維(セルロース)や多糖体が分解され、人間のエネルギー源となります。

腸内細菌が腸の中の食物を分解する際にガスが発生する場合があり、それがおならの原因になります。

腸の中に入る食物の種類や腸内細菌の種類によって、発生するガスに違いが生じて、おならの臭いの違いになるのです。

腐敗と発酵、臭いおならは腐敗臭なのだ!

腐敗と発酵、どちらも微生物が関連して食品などを変化させることです。

発酵食品は、納豆やチーズ、酒、味噌など沢山の種類があって、人々の食事を豊かにしてくれています。

一方、腐敗は食品から異臭が発せられ食べられなくしたり、時には食中毒の原因になったりもします。

細菌の種類によって発酵するか、腐敗するかが決まるのですよ。

発酵と腐敗、二つの違い、分かりますか?

発酵とは、食品中の糖やたんぱく質が細菌やカビなどの微生物によって分解され、乳酸やアルコール、アミノ酸などが生成されることを言います。

分解されたものは人間にとって良い香りを感じたたり、うまみを感じたりします。

酵母や乳酸菌などは代表的な発酵微生物です。

腐敗とは、たんぱく質やアミノ酸が更に分解され、硫化水素やアンモニアなど人にとって不快臭を発することを言います。

時に腐敗によって生じた物質は有害なことがあります。

大腸菌やウェルシュ菌は代表的な腐敗菌です。

腸内の腐敗菌によって作られたガスがおならに混ざることで、おならは臭くなるんですよね。

腸の中の腐敗菌を善玉菌でやっつけよう

腸の中でも発酵と腐敗が同時に繰り返されています。

特に腸内の食物を腐敗させる菌のことを「悪玉菌」と呼ぶことがあります。

これに対して、悪玉菌の増加を防ぐ乳酸などを産生する菌のことを「善玉菌」と呼ぶことがあります。

腸の中で腐敗が進むと、アンモニアや硫化水素、インドールやスカトール、アミンなどの有害な物質が産生され下痢や便秘、食中毒の原因になったりします。

これらの分解産物は強烈な悪臭を放ち、臭いおならの原因にもなっています。

さらに、これらの毒素は腸内だけではなく、血中に吸収され全身の組織に悪影響を与えます。

たとえば、お肌の荒れや体臭の原因になったり、肝臓に負担をかけたり、大腸がんの原因になるとも言われているんですよ。

悪玉菌は乳酸や酪酸を含んだ酸性の環境では増殖が抑えられます。

乳酸菌やビフィズス菌はこれらの酸を産生することで悪玉菌の増殖を抑えることができるので、善玉菌と呼ばれています。

善玉菌が含まれているヨーグルトや乳酸飲料が健康に良いと言われているのは、腸内の悪玉菌の増殖を抑制することができるからなんですね。

悪玉菌の数を減らすことで、おならの不快な臭いが弱まるので、その意味でもヨーグルトなどは優良食品ですね。

あきらめないで!ヨーグルトパワーで腸内の善玉菌を増やそう

善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌を腸内に増やすにはどうすればいいのでしょうか?

善玉菌が増えれば、悪玉菌の作る不快な臭いのガスが少なくなっておならの臭いも薄れるのにと思いますよね。

腸内の善玉菌と悪玉菌の比率は、驚くべきことに生後6カ月で決まってしまうんですね。

生後6カ月まで母乳だけで育った子供と、粉ミルクや早めの離乳食で母乳以外の栄養を与えた子供の便の中の善玉菌と悪玉菌の比率を調べると、母乳だけで育った子供の方が圧倒的に善玉菌の比率が高いことが報告されています。

さらに、腸内細菌の善玉菌、悪玉菌、それ以外の菌の3つの菌の比率は、生後6カ月頃までに大体決まってしまい、それ以降は一生その比率は変わらないということもわかっています。

多くの食品メーカーで、生きた乳酸菌を腸にいかに長くとどまらせるかを研究していますが、未だに長期間腸に留まる乳酸菌やビフィズス菌は発見されていないようです。

腸内の善玉菌が少ない人が善玉菌を増やすためには、定期的にヨーグルトなどの乳酸菌やビフィズス菌を多く含む食品を取ることが現在の一番の良策のようです。

自分は母乳で育ったのか、粉ミルクで育ったのかをお母様に聞いてみてください。

母乳で育った方は是非お母様に感謝してくださいね。その人の腸内の善玉菌は普通の人よりも多いはずです。

一方、母乳ではないという方は、残念がらないでくださいね。

毎日ヨーグルトや乳酸飲料を摂ることを習慣づけることで、腸内の善玉菌を増やすことができるのですから。

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おならが出るのは腸が正常に動いている証拠

さて、ここまではおならの原因や仕組み、腸内細菌について説明してきました。ここからは、おならが腸の中をめぐって、最終的に肛門から排泄されるまでのお話をしたいと思います。

おならの原因の大半が口から胃に入った空気であることを説明しました。つまり、おならは口から肛門までを旅している空気ともいえます。ここで口から肛門までの旅路を簡単に紹介しますね。

口⇒食道⇒胃⇒十二指腸⇒小腸(空腸⇒回腸)⇒大腸⇒直腸⇒肛門、といったコースをたどるんですね。

そして、あなたは口から肛門までどの位の長さかご存知ですか?
大体7~8メートル位と言われています。口から肛門までの長い旅路は専門的な言葉でいうと、「消化管」ということになります。おならは消化管の端(口)から端(肛門)までを通過してきたガスということなんですね。

では、おならはどうやって肛門まで運ばれるのでしょうか。それは、消化管の運動によって運ばれます。口から入った食物が消化管で消化・吸収されて最終的には大便として肛門から排泄されますよね。

その時に腸が口から肛門に方向にチューブの中身を押し出すように動くんですね。この動きを「蠕動(ぜんどう)運動」と言います。

おならがでない場合は病気の可能性もある

おならも蠕動運動に乗って、消化管の中を肛門に向かって運ばれるのですよ。ですから、おならが出るということは、ちゃんと腸が動いているという証拠になるんですよ。

便秘や恐ろしい腸閉塞など腸の動きが悪くなる状態や病気の時には、なかなかおならが出にくくなるんですね。

このような場合でも、おならは作られていますから、逃げ場を失ったおならが腸に溜まってしまいお腹がパンパンになって苦しいということになるんですね。

意思の力が最後の砦、おならの我慢は気合いなのだ

冒頭で「出物腫れ物所嫌わず」と言いましたが、おならに関していえば、おならをしたいなともよおしても所構わず誰もがおならをするわけではないですよね。

大半の大人(子供も)は、人前ではきちんと我慢しますよね。そして、トイレや誰もいない所などでは、おならを出すことができますよね。

つまり、おならは意思の力でコントロールできるということです。似たような現象に、便意や尿意もありますね。

おならや大便やおしっこは、みな「出物」ということになり嫌われ者のように言われますが、個人の意思によって我慢できたり、場所と場合をわきまえて排出できるというたいへん高度な仕組みによって制御されているんですよ。

ここでは、排便やおならを我慢する仕組みについて説明しますね(排尿については少し仕組みが異なりますので、割愛させてください)。排便もおならも同じ仕組みで制御されています。

排便やおならを我慢してくれる肛門

おならや大便が肛門の直前の直腸まで来ると、直腸が膨らんで壁が引き伸ばされます。

直腸の壁には圧力センサーがあり、引き伸ばされることで作動し、その情報は直腸から神経を伝わって仙髄(脊髄の一部)にある排便中枢に伝えられます。

さらにその情報が、延髄―脳へと伝えられて脳で意識としての便意をもよおします。

便意をもよおしたときにトイレに行けない状況ですと、漏れないように肛門の筋肉を締めるのです(この状況って経験ありますよね)。

肛門の開閉を行う筋肉のことを「肛門括約筋(こうもんかつやくきん)」と言いますが、肛門括約筋には2種類あるんです。一つは外側を取り巻く「外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)」で、意思よって締めたり開けたりができます

もう一つは「内肛門括約筋(ないこうもんかつやくきん)」で、これは意思では開閉できず、直腸内の圧力が高まると自然と開く仕組みになっています。

外肛門括約筋のおかげで排便やオナラを我慢できる

便意をもよおした場合、すぐにトイレに行けないときは、意思の力で外肛門括約筋を締め付けます。

しかし、だんだんと直腸に便やおならがたまってくると圧力が高まり、強い便意を感じるとともに内肛門括約筋が開き始めます。こうなると排便やおならを我慢するのは意思の力だけになります。

うまくトイレに入れれば、この段階で外肛門括約筋を意志で開かせて、無事排便やおならを出すことができるのです。

しかし、トイレに入れなければ、意思が尽きてしまい、かわいそうに人前で「ぷっ」ってことになってしまうこともあるのです。

排便反射ってすごい!

直腸に溜まった大便やおならが肛門から出るまでの一連の反応を「排便反射」とか「直腸肛門反射」などと言います。この反射は意思によって制御できる反射運動で、ある程度のトレーニングが必要です。

生まれたばかりの赤ちゃんはウンチやおならを我慢しませんよね。だんだんと成長するうちに、トイレ教育などによって身につく反射なのです。

排便反射は直腸、脊髄、脳、肛門括約筋が関連した複雑な反射運動であり、生体の中でも排尿反射とならんで最も高度な反射運動だと言われています。

排便反射が身につくまでには10年程度かかると言われていますので、小学校低学年ぐらいのお子様が大人よりも排便やおならで失敗するのは仕方がないとも言えますね。

事故などで脊髄を損傷したりすると排便中枢が働かなくなったりして、排便やおならを我慢できなくなります。

また、排便反射はトレーニングによって身につく高度な反射ですが、失われるのも早く、高齢者になっておならが漏れることが多くなるのも排便反射の衰えと言えるのです。

誰もが排便やおならで失敗はしたくはありませんよね。でも、排便反射の複雑さを理解することで、失敗した人たちに寛容になれるかもしれませんね。

おならのイメージは変わりましたか?

冒頭の「おなら」よもやま話では、おならに対するイメージをいろいろと書いてみましたが、ここまで読み進められて、読む前とは少し違った印象を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。

おならは腸の健康のバロメーターであることや、腸内に善玉菌を増やすことでおならの臭いが和らぐこと、おならはとても高度なしくみによって制御されていることなど、いろいろな角度からおならのことを深く掘り下げて説明しました。

おならという一見すると滑稽な生命現象ですが、詳しく知ることで自分や家族の健康に役立てたり、身体ってとっても精巧にできているんだなあと感心することができるんですよ。

この記事の筆者

仁古里 笑 (経営コンサルタント)
1990年代初めから、病院での臨床医学研究、海外大学での基礎医学研究、製薬会社での創薬研究・開発など、20年近く医学・生物学・薬学の研究・開発に携わる。

元々の専門が粘膜免疫であり、腸内細菌と腸の粘膜免疫との関連、そこからの全身疾患への影響などに精通している。

現在は専門を経営学に転じ、病院経営などの支援をしながら、一般の方に向けて身体の仕組みや病気のこと、薬のことなどをわかりやすく説明している。

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