【専門家が答える】おなら,ガスが止まらない!原因と対処法について
こんにちは。
私は1990年初めから20年間ほど腸内細菌と腸の粘膜免疫に関して研究してきました。
腸とおならは切っても切り離せないものです。腸内細菌の働きがおならに大きくかかわってきます。
今回は腸内細菌の働きを踏まえて、おならが止まらない原因と対処法について説明していきます。
記事の目次
おならがよくでるという方は緊急対処、 もともと多い方は根本対処を
まず、おならが止まらないという現象は、通常は起きることがありません。
通常ですと、おならの頻度は数時間(2~5時間)に1回程度です。多少のばらつきはありますが、1時間に何度もおならが出てしまうというような方は明らかに多いと言えましょう。
明らかにおならの回数が多いといった場合、2通りあります。
1.急におならの頻度が増えたという場合
おならのガスは口から入る空気と腸で発生するガスから構成されていますが、口から入る空気の量は日常的な習慣で決まることが多いので一定量と考えられます。
ですから急におならの頻度が増えたという方は、腸でのガス発生量が急に多くなったと考えられます。この場合、臭いを伴う場合があります。このような方には、おならが急に増えたことに対する緊急対処法が必要と思われます。
2,普段からおならの頻度が多いという場合
この原因は様々なことが考えられますが、多くは生活習慣から来るものと思われます。
このような方は、ご自身のおなら対策法を何かお持ちのはずですから、緊急対応の必要は低いと考えられます。むしろご自身の健康状態のチェックも含めた根本対処法が必要でしょう。
おならが急に増えたのは腸の異常事態!緊急対策はひどい下痢と同じ
いつもはおならの回数を意識しないのに、急におならが増えたという場合は、その数時間~数日前に何らかの原因があると思われます。
食べ過ぎや飲み過ぎ、普段食べつけないものを食べた、炭酸飲料(ビールなど)をいつもよりも多く飲んだなどです。特殊な場合としては、お薬(抗生物質など)などの影響もあります。
このような急激な変化に対して、腸が一時的に正常に働かなくなっており腸内細菌のバランスが崩れて、腸内のガスの発生量が急速に増加したことが考えられます。
多くの場合、下痢などの他の症状を伴うことがあります。従いまして、急におならが増えた場合、下痢に準じて対処することをお勧めします。下痢の対策に関しては、以下の記事が参考になります。
おならの量が急に増えたなと感じたら、次のことを行ってみてください。
おならを出すために頻繁にトイレに行く
便意がなくとも頻繁にガスが出るのであれば、トイレで出してしまう方が効果的です。
トイレに座ると腸内に溜まっていたガスも一緒に出るので、多少は次のおならまでの時間を稼ぐことができます。
おならで失敗しないためにも不自然にならない程度に頻回にトイレに行って座ってみましょう。 また今回はおならの記事ですので、言及しませんが、トイレに通うことを習慣化することが排便を週間化させるためのポイントとなったりします。
便秘で悩まれている方は以下の記事を見ることを強くお勧めします。
周囲にお腹の具合が悪いことをそれとなく伝えておく
頻繁にトイレに行くことを不審がられないように、家族や職場など周囲の人たちに「なんか、今日はお腹の調子が悪いのよねえ」とそれとなく伝えましょう。
当然のことですが「今日はおならが沢山出ますのでよろしく」ということまでは話す必要はないです。
誰もが似たようなことは過去には経験していますので、同情的になってくれる人がほとんどです。また周囲に伝えることで何となく気分が楽になります。
しかし、このことは周囲の人間関係によっては言うべきではない場合もありますので、その際にはご自身で判断してください。
半日程度絶食し、乳酸菌飲料を飲む
腸の負担を軽くするために、半日程度絶食することをお勧めします。食べ過ぎによる一時的な下痢であれば、半日程度の絶食でよくなる場合があります。
絶食後も約半日程度は脂っこい食事や繊維質の多い野菜を摂るのは避けて、消化の良い素うどんやおかゆ、食パンなどを少量取るようにしましょう。
そして、乳酸菌飲料などは整腸のために世界中で昔から飲まれており、効果も実証されていますので、普段飲まない方もこの時は飲むように心がけてみてください。
整腸剤を飲むのも効果的な場合がありますが、その際は薬剤師さんに相談したり、添付文書をよく読んで下さい。
薬剤師の方が執筆した記事がございます。興味ありましたら、ぜひ読んでみてください。
ひどい症状や悪化傾向がみられる場合は、迷わずお医者様に相談!
おならとはいえ、急激に増えた場合は、何らかの異常が身体に生じているというシグナルの場合があります。
症状が一時的であり、その後順調に治ればよいのですが、症状がひどい場合(お腹がパンパンに張ってしまうなど)やどんどん悪化する場合は迷わずお医者様にご相談ください。また、症状が長引く場合も同様です。
普段からおならが人よりもとても多いなと感じたら、まず病院に行こう
普段からおならがたくさん出て困るという方の場合、原因は次の3つが考えられます。
- 口から入る空気の量が多い
- 腸内のガスの発生量が多い
- 何らかの疾患によるもの
冒頭でも述べましたが、日ごろからおならの量が異常に多く止まらない状況は、普通ではありません。おならの多くなる原因を医学的観点からお医者様に見ていただくということが何よりも先決です。
何らかの疾患によっておならが多くなるという場合、生活習慣の改善だけでは解消できない場合があります。
また、深刻な疾患が隠れている場合、生活習慣の改善に熱心になるあまり、病院に行くタイミングを逃してしまう恐れもあります。
まずはお医者様にご相談されることをお勧めいたします。
特定の疾患が否定されたら、生活習慣を改善してみよう!
特定の疾患が否定された場合、今度はじっくりと腰を据えて生活習慣を改善し、おならを減らすようにしていきましょう。
おならのガスの原因である口から取り込まれるガスの量を減らすことと、腸内で腸内細菌によって発生するガスを減らすことが目標です。
この両者のどちらが原因であるかを特定することは、なかなか難しいので両方の改善を目指してみましょう。
飲み込まれた空気がおならやゲップになる
おならのガスの約70%は、口から取り込まれた空気といわれています。
呼吸は肺に吸気として空気を取り込み、呼気として吐き出すことですが、これとは異なり空気を食道や胃の方に飲み込んでしまう場合があります。
この飲み込まれた空気がおならやゲップとして、口や肛門から排泄されます。
口から空気を飲み込まないようにするためには、以下のような注意が必要です。
食事の時に大口で食べたり飲んだりしない。
食事の時に食物や飲み物と一緒に空気を飲み込むのですが、大口を開いて食べたり飲んだりすると大量の空気が取り込まれてしまいます。
この傾向は早食い癖のある人に多く見られます。食事は少しずつよく噛んでゆっくり食べましょう。
炭酸飲料などのガスを多く含む飲み物を多くとらない。
ビールやコーラなどの炭酸飲料には既に多くのガスが溶け込んでいます。これを沢山飲むことで、大量のガスが胃の中に入ってしまいます。
おならがどうしても気になる方でビールなどが大好きな方は、おならの回数を減らす方をとるか、ビールを楽しむ方をとるかの選択になりますが、これは人生観の問題ですので個人のご判断にお任せしたいと思います。
話す頻度を減らす。ガムを噛まない(口を開ける頻度を少なくする)
食べたり飲んだりする以外にも口から空気は飲み込まれています。話したり、ガムを噛み続けたりすると自然と空気が取り込まれてしまいます。
この場合も、過度に制限をすると却ってストレスになったり、仕事などに影響がある方もいらっしゃいますので、適宜控えましょうという程度です。
口で呼吸をしない。
通常呼吸は鼻でするものですが、鼻が詰まったりすると口で呼吸をすることになります。また、まれに習慣的に口で呼吸をする方もいらっしゃいます。
口からの呼吸することによって、胃に空気を取り込む機会が増えます。鼻が詰まっている人は鼻づまりを直すことが大切です。口で息をする習慣のある方は、鼻で呼吸するように習慣を変える必要があります。
腸内で発生するガスを減らすには食事の工夫と便秘を解消すること
おならのガスの約30%は、腸内の食物が腸内細菌によって発酵したり腐敗する際に発生したガスです。腸内でのガスの発生を抑えるためには食事の工夫と腸内細菌のコントロールが重要です。
特に腸内細菌をうまくコントロールする上で大切なことは、便秘をしない生活習慣を身に着けることです。食事の工夫や、便秘を解消・予防するためには以下のような注意が必要です。
食物繊維の多い食品はほどほどにする。
食物繊維を多く含む食品としては、イモ類、野菜、果物、穀物、海藻、キノコ、豆類などの植物性食品が上げられます。食物繊維は腸内細菌によって発酵され大量のガスが腸内で発生する原因となります。
詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ただ、だからといって「食物繊維を含む野菜などの摂取を止めよう」とは判断しないでください。
そもそも、日本人が不足している栄養素として食物繊維があり、世間は食物繊維の摂取を呼びかけています。しかし、人によっては過剰に摂取している方もいらっしゃいます。
菜食主義の方やイモやナッツなどが大好きで通常の方の2倍も3倍も野菜を食べるという方は、普通の人の摂取量に戻すことが重要です。
決して食物繊維を摂らないという判断はしないでください。こちらでは割愛しますが、興味ある方は以下の記事をご覧ください。
ヨーグルトなどの乳酸菌を多く含む食品を毎日摂る。
腸内細菌で食物を発酵させたり、腐敗させて大量のガスを発生させる細菌を悪玉菌と呼ぶことがあります。この悪玉菌が増えると大量のガスの原因になります。
便秘は腸内に何日分もの便を滞留させるために、悪玉菌を腸内に溜めこんでいることになります。これだけでもガスの大量発生の温床となります。
悪玉菌は、乳酸や酪酸と言った酸があると増殖しにくいという特徴があり、これらの酸を作ることができる乳酸菌やビフィズス菌がいると悪玉菌の活動を抑えることができます。
そのため、乳酸菌やビフィズス菌は善玉菌とも呼ばれています。善玉菌を多く含むヨーグルトなどは、おならの発生を抑えるだけではなく、様々な不利益をもたらす悪玉菌を抑えることができるので、優良食品と言えます。
ただし、ヨーグルトなどの乳酸菌は腸に居つかないことが多いので、少しづつでも毎日摂り続けることが必要となります。その手軽さから乳酸菌サプリメントもオススメします。
適度な運動をする。
便秘の解消のために運動が有効なことが知られています。毎日少しずつでもよいので心がけましょう。
ちょっとした隙間時間などに、お腹をぐるぐると回したり、歩く時間を長くするだけでも効果が出ますよ。要は毎日少しずつ行うことが大切なのです。
ストレスを溜めない生活を心掛ける。
腸と脳は密接なつながりがあり(腸脳相関)、脳で感じたストレスが腸に影響することが知られています。それは、下痢という形で現れたり、便秘という形で現れたりし、個々で異なります。全く異常を来さない方もいらっしゃいます。
便秘や下痢(急なおなら増加の原因にもなる)を繰り返す方は、自分でも気づかずストレスが溜まっている場合がありますので、定期的にリラックスできることを考えてみましょう。
まとめ:おならが止まらないという現象は異常
今日は、「おなら,ガスが止まらない!!!緊急対処法と根本対処法」と題して、説明をしてきました。
おならが止まらないということは、通常の人には見られない現象であり明らかに異常です。
このような場合は、身体のどこかに異常が見つかる可能性があります。おならと言っても決して馬鹿にしたり、恥ずかしがったりせずにまずはお医者様にご相談ください。
おならが止まらない大半の理由は、便秘だったり、腸の状態が悪いことに関係します。乳酸菌を常日頃摂取する、また生活習慣を規則正しく整える必要があります。
以下に、腸内環境を整えるりコンテンツを用意しました。図解でわかりやすいので、興味ありましたら一読ください。
働きに出たり、子供の育児などで規則正しい生活を送ることが難しいこともあると思いますが、その際は、乳酸菌を毎日摂取するようにしましょう。
腸内環境の改善で便が腸内で腐敗することがなくなり、臭いおならの発生を止めます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
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この記事の筆者
仁古里 笑 (経営コンサルタント)
1990年代初めから、病院での臨床医学研究、海外大学での基礎医学研究、製薬会社での創薬研究・開発など、20年近く医学・生物学・薬学の研究・開発に携わる。元々の専門が粘膜免疫であり、腸内細菌と腸の粘膜免疫との関連、そこからの全身疾患への影響などに精通している。
現在は専門を経営学に転じ、病院経営などの支援をしながら、一般の方に向けて身体の仕組みや病気のこと、薬のことなどをわかりやすく説明している。