なぜおなら(ガス)が勝手によくでるのか?ガス漏れの原因
こんにちは。
私は1990年初めから20年間ほど腸内細菌と腸の粘膜免疫に関して研究してきました。
子供の成長過程で「おなら」という言葉に非常に敏感な時期がありますよね。
「おなら」と聞いただけで「キャッキャッ」と喜んだり、落書きにも「おなら」と文字で書いたり、お尻からガスが放出された絵を描くのが大好きな時期を必ず通過します。
これは成長に必要な過程であり、無理にやめさせると成人する際に何らかの異常な幼児性が残るという学者もいるくらいなんですよ。
子供がおならに反応するのは、大人がおならを恥ずかしいものと感じているのを察知しているからなのかもしれませんね。
一緒にいる家族のおならを聞いて、その後の大人の反応を見ることで、「この生理現象は本来隠すべきであるが、不意に出てしまうことがある。そしてそれは恥ずかしいことなのだ」ということを学んでいるのでしょう。
子供が大人の見ている前で、わざとおならに対して挑発的な表現をするのは、文字通り「屁(へ)みたいなもの」に対する大人の多様な反応を観察しているのかもしれません。
子供は大人のそれぞれ異なったおならに対する多様な反応を見ることで、自分自身の中に「おなら」なるものが定義づけられて、自分や他人のおならに対する対応方法を身に着けていくものと思われます。
そして、おならに対する興味が徐々に薄れていくのだと思われます。
おならの発生する量や回数には個人差がありますが、ある程度の日常的な努力によって減らすことが可能です。また、おならの出る仕組みを知ることで、人前でのおならを催す回数や我慢することもある程度可能となります。
記事の目次
おならのほとんどが口から入った空気なのだ!
成人が1日に作るおなら(ガス)の量ってご存じですか?
成人の場合、1日大体1500mL~1.5Lのオナラを作る言われています。中型のペットボトル1~3本分というところです。このガスを5~10回に分けて、「おなら」として肛門から放出します。
単純計算ですが、1日の活動している時間(起きている時間)を16時間とすると、その間におならが出るのは3~7回位となります。2時間半~5時間に1回おならが出るということですね。
この数回のおならの回数を減らしたり、人前にいる時に催さないようにしたり、我慢できることが目標となります。
この範囲を大きく超えておならが出たり、逆に出なかったりする場合、病気が隠れている場合がありますのでご注意くださいね。
おならが通常よりも多く出る傾向がみられる疾患としては、呑気症(どんきしょう)や過敏性腸症候群が知られています。また、肝臓や膵臓(すいぞう)、胆のうの病気でもおならが多くなる場合があります。
一方、おならが出なくなる病気としては、腸が閉塞(へいそく)(内腔が詰まること)する大腸がんや腸閉塞(へいそく)などがあります。また、腸の動きが鈍くなってもおならは出にくくなります。
おならの回数が極端に多すぎても少なすぎても、病気による異常シグナルの可能性がありますので、思い当たる方は一度病院にご相談ください。
ここでは、以上のような病気がないことを前提に、おならを減らすための提案をしていきたいと思います。
排便反射:おならの出る仕組みはとても巧みなのだ
では、口や鼻から入った空気や腸内で発生したガスは、どのようにして運ばれて肛門から排せつされるのでしょうか?とても巧みな仕組みがあるのですよ。
口から肛門までには食道や胃、腸などがありますが、これらを「消化管」と言います。太さの差はあるものの基本的な構造は皆一緒です。内側(食物が通過する側)は粘膜に覆われており、外側は筋肉に覆われています。
焼き肉屋さんで食べるホルモンやテッチャンなどは、牛などの管状の腸を開いたものですが、あの独特な「クニクニ」とした歯ごたえは消化管の粘膜や筋肉によるものです。
消化管の中のガスは、腸の筋肉がちょうど歯磨きチューブを搾るように動くこと(蠕動、ぜんどう)によって便と一緒に肛門方向に押し出されます。逆流することはありません。
また腸に食物が入っていないときにはこの動きは起きません。
腸から神経を通して、脳へ刺激が伝わる、そして「おならがしたい」と感じる
さて、腸の働きによって肛門の手前の直腸(ちょくちょう)まで運ばれたおならですが、いったん直腸にためられることで直腸の壁をガスの圧力で押し広げることが刺激となり、その刺激は直腸から出ている神経(骨盤神経)を介して脊髄の排便中枢に伝わります。
さらに、その刺激は脳に伝えられ「おならがしたいな」と感じることができます。そして、例のお尻のあたりがもぞもぞとした催しが起きるわけです。
一方、肛門では、肛門周囲を締め付けている2種類の筋肉が、今か今かとおならの放出のタイミングをうかがっています。
おならを我慢できるのは、外肛門括約筋のおかげ
肛門を締め付けている内側の筋肉を内肛門括約筋と言い、この筋肉は私たちの意志では締めたり緩めたりすることができません。直腸内のガスの圧力が徐々に高まって内肛門括約筋の締めつける力を上回った時に勝手に開いてしまいます。
内肛門括約筋だけですとおならを我慢することはできないのですが、もう一方の外側に位置している外肛門括約筋が活躍することでおならを我慢することができるのです。
つまり、外肛門括約筋は私たちの意志の力で「ギュッ」と締め付けることが可能なのです。おならを我慢できるのは唯一、外肛門括約筋の活躍のおかげなのです。
おならを放出してもよい時まで、外肛門括約筋は意思の力で肛門を締め付けているのです。
このように、おならが消化管を巡り、肛門から排せつされるまでの仕組みは腸や神経、脳、筋肉などの巧みな働きによって制御されています。
この仕組みを理解しておくことで、人前でのおならを催す回数を減らし、我慢することができるように工夫ができるのです。
自ら判断できる臓器、腸
ちょっと余談になりますが、腸は大変賢い臓器で、食物が入ってくると腸自身が判断して動いて、膵臓(すいぞう)や胆のうなどの他の臓器と協力しながら食物を自動的に消化していきます。
腸の外側は、神経がちょうど網タイツのようにネット状に貼り回らされていて、常に外からの食物などの侵入を監視し、食物を自動的に消化し、食べ過ぎた場合はわざと下痢をさせて腸内の内容物を素早く外に排せつさせるように働きます。
腸は自ら判断できる臓器であり、「第二の脳」とも呼ばれることがあるんですよ。
おならのガスの発生量を少なくするには食事の工夫と便秘の解消だ
ここまでおならが作られる仕組みやおなら出る仕組みについて説明してきました。ここからは、おならの量を減らすにはどうしたらいいのかについて説明していきましょう。
おならの量を減らすには、大きく二つの工夫が必要です。一つは食事の工夫です。もう一つは便秘を解消するための工夫です。
食事の工夫①よくかむ。ビールなど炭酸を控える
最初は食事の工夫についてから説明しますね。
食事の時に取り込まれた空気がおならの大半を占めるので、食事の時になるべく多くの空気を取り込まないようにすることが大切です。急いで食べるとどうしても空気をたくさんの見込むことになりますので、ゆっくり食べましょう。
また、ビールなどの炭酸飲料はたくさんのガスを含んでいますので、おならが気になる方は別のお酒にするなど炭酸を含む飲み物を控えるといいでしょう。
とはいってもビール党は我慢できませんよね。我慢できないときは、かえってストレスをためることにもなるので、おならのことなんか気にせず飲んじゃいましょうね。
食事の工夫②ガスが発生しやすいイモ類は控えめにする
続いて食事の内容ですが、腸内細菌の発酵作用によってガスが発生しやすい食物を避けることをお勧めします。
例えば、イモ類などの植物繊維の多いものはガスが発生しやすくなるので、おならが気になる人で、イモ類が大好きな方は少し控えるといいかと思います。
ただし、食物繊維は日本人に不足している栄養素の一つですので、全く摂らないのは問題です。極端に野菜やイモ類、穀類を減らすのはよくありません。
食事の工夫③乳酸菌を毎日摂取することで悪玉菌を減らす
腸内細菌の中には、食物を盛んに発酵・腐敗させてガスを大量に発生させる種類の細菌がいます。このような細菌を悪玉菌と呼ぶことがあります。
悪玉菌は酸に弱いという性質がありますので、乳酸や酪酸を産生する乳酸菌やビフィズス菌の多い環境では、増殖が抑制されることが知られています(そのため、乳酸菌やビフィズス菌は善玉菌と呼ばれることがあります)。
悪玉菌を減らすためには、善玉菌を多く含むヨーグルトや乳酸飲料を多くとることが有効です。ヨーグルトを1日に150グラム位摂り続けると、約2週間でおならの回数減り、臭いも弱くなったという報告があります。
ただ、残念なことにヨーグルトを止めると元に戻ってしまうので、毎日食べ続けることが必要です。
頑固な便秘は病院へ。それ以外は生活習慣の改善でなおす
ご承知の方も多いかと思いますが、便秘はおならを気にする方にとって大敵です。便をおなかの中に長く停滞させることは、おならの発生源を大量に抱えているようなものです。
おならの量の増加に加え、臭いもきつくなり、おなかが張ったり痛くなったりで、便秘には良いことは一つもありません。便秘を早く解消することがおならのお悩みを解消するための、最良の近道と言えるでしょう。
頑固な慢性的な便秘については、きちんと病院に行ってお医者さんに相談されることをお勧めします。しかし、比較的軽い便秘であれば、生活習慣を改善することでよくなる場合があります。
便秘解消に欠かせない三つ。食生活の改善、運動、ストレス解消
食生活を改善すること、運動をすること、ストレスをためないことの三つが便秘解消には大切です。食生活は先ほど述べた通りですが、植物繊維は多くとった方が効果的です。
過度な植物繊維はおならの量を増やすことにもなりますが、便秘を解消することの方がメリットが大きいので、肉ばかりで野菜が少ないという方は、野菜を増やすことをお勧めします。
ヨーグルトは便秘にもとても効果的ですので、毎日とることをお勧めします。
運動は軽いものでもよいので、毎日することを心掛けたいものです。眠る前に寝床でおなかをひねるようにクネクネと動かし、腹筋体操を10回程度する習慣をつけるだけでも効果は出ます。
また、休日などにウオーキングやジョギングを行うことも次に述べるストレス解消効果も得られとても有効です。
ストレスは現代社会に生きる方々は多少なりとも感じるものです。なくせと言われてもそうそうなくせるものではありません。
この点はご自身の生活やお仕事、人間関係などをあらためて見つめ直し、どうしたらストレスを少なくできるかを考えてみましょう。
この作業を行うことはストレスを軽減するだけではなく、ご自身の人間形成の上でも必要なことと思われます。
また、ストレスはためても解消できればよいわけです。ストレス解消法は個人個人で違うのですが、ご自身に合ったストレス解消法を見つけることも重要なことです。
とかく人間は保守的です。新しいことや今までの習慣を変えるようなことはしたくないですよね。
しかし、便秘のように生活習慣が原因になっている場合、どこかで「えいやっ」と決心しないとよくならない場合もあります。おならを改善するためにも、今日から「えいやっ」と習慣を変えてみませんか?
人前に出る前に出しちゃおう
さて、ここでは視点を変えて人前でおならを催さないためにはどうしたらいいのかを考えてみたいと思います。
「出物腫れ物所嫌(かま)わず」というからそんなの無理!という方もいらっしゃるかもしれませんが、完全ではありませんが結構効果的な方法があるのです。
先にも触れましたが、成人の一日にするおならの回数は5~20回程度です。そのうち、活動時間内に出る頻度は2.5~5時間に1回程度で、回数はせいぜい3~7回くらいです。
そして、おならが出るのは直腸にたまってしばらくしてからです。
以上のことから、会議などの人前に出る前に一度おならを出してしまえば、しばらくは出ないことになりますね。そうです、人前に出る前におならを出しちゃえばいいんですね。
では、どうすれば、人前に出る前におならを出すことができるのでしょうか?
トイレに座ると脳から指令が!それでもでないなら、マッサージ
トイレに行って座ってみてください。不思議なことに座るだけでおならがでることがあります。それは、便座に座ることで内肛門括約筋が少し開くからです。
また、トイレに座ることで、「おならをしてもいいんだよ」という指令が脳に届き、緊張していた外肛門括約筋を緩めることができるからです。
この状態でおならが出たならば、この後はしばらくはおならが出にくい状況を作ることができます。もしも、座っただけではおならが出ない場合は、少し息んで見ましょう。
さて、便座にすわって息んでもおならが出ない場合ですが、この状況であればしばらくはおならが出ないことはわかるのですが、どうしても出したいというときには、おなかの左側に手のひらを当てて大きく円を描くように3分程度マッサージしてみましょう。
おなかの左側の腸(下行結腸といいます)が肛門に近いので、そこをマッサージすることで、腸の動きを促進させ腸にたまっているガスを肛門まで移動させることができます。
うまくいくとおなかが「グルグル」と鳴っておならが出ることがあります。それでも、おならが出ない場合は、しばらくは出ないから大丈夫!と自分自身に言い聞かせてから人前に出ていきましょう。
1日一分のおなら我慢体操で強い肛門を作ろう!
おならが漏れてしまう原因に肛門括約筋が弱いことがあげられます。先にもお話しましたが、外肛門括約筋は私たちの意志の力で締めたり、緩めたりすることができます。
そして、外肛門括約筋を働かせることによって、おならを我慢できるのです。
外肛門括約筋は、普段はある一定の緊張で締められていますが、この締まりが緩くなることでおならが漏れてしまう場合があります。高齢になるとおならの漏れが多くなるのは、肛門括約筋が弱くなるからなのです。
ですから、肛門括約筋を鍛えることで肛門の締まりを強くすれば、おならが不意に漏れることは少なくなります。では、どのように鍛えるのでしょうか?これはとても簡単です。
筋肉は緊張させる(力を入れること)ことで筋繊維が太くなり鍛えられます。肛門括約筋を鍛えるには、肛門をしっかり閉じるというトレーニングを行えばよいのです。
ちょうどおならを我慢しているときのように肛門をしっかり強く締め付けることを、1日30秒程度行ってみてください。できれば朝夕2回行ってください。
合計でたった1分ですが、これを毎日繰り返すことで、丈夫で強い肛門括約筋に鍛えることができます。肛門括約筋を鍛えることで、おならや便が漏れにくくなるほか、肛門周囲の血行もよくなり痔(じ)の予防にもつながります。
おならへの備えは普段の生活習慣を改善することが大事
おならがたくさん出て困ってしまうという人は、人前でおならが出たら困るなとか、いつもおならを我慢しているのはつらいなという強迫観念が常に頭のどこかにあります。
おならの量を減らし、人前でおならが出る心配を取り去ることで、強迫観念が薄まり毎日の生活の上で気分が楽になると思われます。
おならの悩みは多くの人が抱えています。ご自身だけではありません。そして、決して解決できない問題ではありません。しかし、解決するためには、ある程度の継続的な努力や生活習慣の変更が必要です。
しかし、今回ご紹介したさまざまな方法を一気に行うと、そのこと自体がストレスになり継続が難しくなりますので、まずはご自身あった方法を一つか二つを選んで試してみてください。
そして、どうかあきらめずに続けてみてください。少しずつですが改善するはずです。改善を実感できたならば、それを励みとしてどんどん健康的な習慣を身に着けていってくださいね。
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この記事の筆者
仁古里 笑 (経営コンサルタント)
1990年代初めから、病院での臨床医学研究、海外大学での基礎医学研究、製薬会社での創薬研究・開発など、20年近く医学・生物学・薬学の研究・開発に携わる。もともとの専門が粘膜免疫であり、腸内細菌と腸の粘膜免疫との関連、そこからの全身疾患への影響などに精通している。
現在は専門を経営学に転じ、病院経営などの支援をしながら、一般の方に向けて身体の仕組みや病気のこと、薬のことなどをわかりやすく説明している。