腸内環境とインフルエンザ予防の関係
みなさんも人生の中で1度は、インフルエンザを発症してしまったことがあると思います。
免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザなど様々な病気を発症しやすくなります。
免疫力の低下は、気温の変化なども原因の1つですが、実は腸内環境の悪化も免疫力が低下する原因になります。
そこで今回は、腸内環境と免疫力の関係、乳酸菌とインフルエンザの関係に触れながら、インフルエンザを予防する方法についてご紹介します。
インフルエンザは腸と乳酸菌で予防する
腸内環境という視点でインフルエンザを予防する場合には、大きく分けると以下の2つ方法があります。
- 腸内環境を整えて免疫力を向上させる
- インフルエンザに有効に作用する乳酸菌を摂取する
腸内環境が悪化すると、腸内で有害物質が生成されたり、便秘になったりして免疫力が低下します。
ですので、腸内環境を整えて、免疫力を維持しておくことが大切なのです。
また、乳酸菌の中には、免疫細胞を活性化させて、インフルエンザを予防したり、症状を和らげたりする菌がいます。
今回は主に後者の方法について詳しく紹介します。
具体的な方法の紹介に入る前に、腸内環境について詳しく知らない方のために、腸内環境のことを簡単に説明します。
腸内環境とは
細菌というと、病気を引き起こす原因といった印象が強いですが、私達の身体には、複数の細菌が棲み着いています。
腸内には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌という3種類の細菌がいて、これらの菌が集まって腸内フローラという独自の生態系を形成しています。
善玉菌、悪玉菌、日和見菌は、日々勢力争いをしており、この勢力争いによって腸内環境の善し悪しが決まります。
善玉菌が優勢の場合は、悪玉菌の増殖が抑えられ、これが理想的な腸内環境であると言われています。
より詳しく言うと、菌のバランスが善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7のときです。
タイプ | 善玉菌 | 悪玉菌 | 日和見菌 |
健康への影響 | ・免疫力を高める ・悪玉菌の増殖を抑える |
・有害物質を生成する ・便秘を引き起こす |
勢力の強いどちらか一方の菌に味方する |
代表的な菌 | 乳酸菌 | ウェルシュ菌 | 大腸菌 (一部は悪玉菌) |
理想のバランス | 2 | 1 | 7 |
腸内環境が、腸内細菌に影響を受けていることは、ご理解頂けたと思います。
実は、腸内環境には免疫力との大きな関わりがあるのです。
腸と免疫力の関係
ここからは、腸内環境と免疫力の関係についてご紹介します。
腸と免疫力に関係性があると聞いて、意外に思った方も多いのではないでしょうか?
腸と免疫力の関係については、小腸と大腸で大きく異なります。
腸内細菌が多い大腸では、腸内環境の状態が免疫力を左右します。
反対に、腸内細菌が少ない腸には、全身の60%の免疫機能が集まっており、これが免疫力に関係しています。
小腸に免疫機能が集まっているのは、食べ物を消化する際に、紛れ込んでいるウイルスや病原菌を体から排除するためです。
この免疫機能が集まっている場所を、「腸管関連リンパ組織」といって、小腸の約25%の面積を占めています。
腸と免疫力について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
また、腸内細菌のうち、健康に良い影響を与えるのは乳酸菌などの善玉菌だと紹介しましたが、乳酸菌も免疫力に大きく関わっています。
乳酸菌と免疫力
腸と免疫力の関係について考える場合に、乳酸菌と免疫力の関係は重要です。
なぜなら、乳酸菌にはNK(ナチュラルキラー)細胞などの免疫細胞を活性化させる働きがあるからです。
具体的に、どの乳酸菌が免疫細胞を活性化させる作用を持っているのかについて、以下の表にまとめました。
菌名 | 作用 |
フェカリス菌EF-2001株 | 体内に侵入した異物を捕食し無力化する、「マクロファージ」の働きを、活性化させる作用がある。 |
Bb-12菌 | |
BC90株 | |
HN019菌 | ウイルスや悪性腫瘍を攻撃する、NK(ナチュラルキラー)細胞の働きを、活性化させる作用がある。 |
ラブレ菌 |
このように、乳酸菌の中には免疫細胞に働きかけて、免疫力を向上させる菌がいるのです。
さらに、そのような乳酸菌の中から、今回のテーマであるインフルエンザの予防につながることが実証実験で明らかになっている乳酸菌をご紹介します。
インフルエンザに作用する乳酸菌
インフルエンザウイルスへの感染を予防したり、感染後の症状を緩和することがわかっている菌を3種類紹介します。
いずれの菌も、人またはマウスによる実験で、効果が検証されています。
S-PT84株
S-PT84株は、赤紫蘇の葉と野菜を使った漬物である、「しば漬け」から発見された乳酸菌です。
この菌はサントリー社が発見したのですが、同社はこの菌のインフルエンザに対する作用を確認する実験を行ってきました。
S-PT84を摂取すると、Th1細胞やNK細胞といった免疫細胞が活性化し、免疫力が向上することが分かっています。
インフルエンザに対する作用は、マウスを利用した実験が行われています。
マウスにS-PT84とインフルエンザウイルスを投与し、14日間後の発症率を調査しました。
※サントリー健康情報レポート 免疫力とプロテクト乳酸菌の関係より
すると、上のグラフに示されたとおり、S-PT84(プロテクト乳酸菌)を摂取したマウスの発症率は、未摂取のマウスよりも低くなりました。
このことからS-PT84には、インフルエンザウイルスへの感染リスクを軽減する作用があることが分かったのです。
S-PT84を使用しているサプリメント商品がありますので、以下の記事を参考にしてください。
クレモリス菌FC株
クレモリス菌FC株は、カスピ海に近いコーカサス地方で作られるヨーグルトに含まれていた乳酸菌です。
クレモリス菌FC株の特徴として、多糖を作り出すことが挙げられます。
この多糖が、インフルエンザ対策に有効に作用するのです。
クレモリス菌FC株のインフルエンザに対する作用は、マウスを利用した実験で確認されています。
実験では、インフルエンザを発症したマウスを2つのグループに分け、一方には生理食塩水を、もう一方には発症7日前から4日後までクレモリス菌FC株を与えました。
結果は、クレモリス菌FC株を与えたグループは、体重の減少が抑えられたほか、NK細胞が活性化しました。
生存率についても、生理食塩水を投与したマウスに比べて高く、クレモリス菌FC株のインフルエンザに対する作用が明らかになったのです。
クレモリス菌FC株を使用しているサプリメント商品がありますので、以下の記事を参考にしてください。
L92乳酸菌
L92乳酸菌は、カルピス社が開発した乳酸菌で、正式名称をラクトバチルス・アシドフィルスL-92と言います。
L92乳酸菌は、ヨーグルトなどの食品から発見された菌ではなく、人の腸にもともと棲みついていた菌です。
インフルエンザに対する作用は、マウスとともに、人に対する作用も検証しています。
マウスによる実験では、L-92乳酸菌を15日間投与し、インフルエンザに感染させ、感染後5日間L-92乳酸菌を投与しました。
そして、「L-92乳酸菌」を「生理食塩水」と入れ替えて同じように投与した別のマウスのグループと比較しました。
※アサヒ飲料株式会社 L-92乳酸菌 研究成果より
グラフに示されたとおり、感染6日後の肺のウイルス数について、L-92乳酸菌を投与したマウスのほうが、生理食塩水を投与したマウスよりも少なくなったのです。
また、人間を対象にした検証では、L-92乳酸菌を含んだヨーグルトを1日100グラム摂取するグループと、全く摂取しないグループに約100名ずつ分けました。
そして8週間の間、毎週唾液の中に含まれるA型インフルエンザウイルスの濃度を測定し、比較したのです。
※アサヒ飲料株式会社 L-92乳酸菌 研究成果より
すると、グラフに示されたとおり、L-92乳酸菌を含んだヨーグルトを1日100グラム摂取したグループのほうが、ウイルス陽性率が低いことが明らかになったのです。
このように、L-92乳酸菌はマウスだけでなく、人への検証でもインフルエンザに対する作用が確認されているので、信頼性が高いといえるでしょう。
L-92乳酸菌を使用しているサプリメント商品がありますので、以下の記事を参考にしてください。
インフルエンザを予防する方法
腸内環境を整えたり、乳酸菌を摂取することで免疫力を高められることがお分かりいただけたと思います。
ここからは、腸に関連する事柄で、インフルエンザを予防する方法についてご紹介します。
インフルエンザを予防するために、以下のような工夫ができます。
インフルエンザを予防する方法
- 有効な乳酸菌を摂取する
- オリゴ糖を摂取する
- 食物繊維を摂取する
これらの工夫をすることが、腸という視点からインフルエンザを予防することにつながります。
有効な乳酸菌を摂取する
乳酸菌が、腸内環境を整えたり、免疫細胞を活性化させたりして、免疫力を向上させることは、先述したとおりです。
ですので、普段から免疫力を向上させるために、乳酸菌を摂取することをおすすめします。
インフルエンザに直接働きかけたいのであれば、先程紹介した3つの乳酸菌を含んだサプリメントを摂取すればよいでしょう。
免疫細胞を活発にさせたり、腸内環境を整えるための乳酸菌は、食事でも摂取することができます。
特に発酵食品には、乳酸菌を含んでいるものも多くオススメです。
また、ヨーグルトには特定の乳酸菌が含まれた商品がありますので、こちらもおすすめです。
オリゴ糖を摂取する
オリゴ糖には、乳酸菌を活性化させたり増やしたりする作用があります。
サプリメントや食事で摂取した乳酸菌を活性化させるのに役立つ成分です。
オリゴ糖は、小腸で分解されることなく大腸まで到達します。
そのため、大腸内の善玉菌を活性化させ、腸内環境を整えるのです。
オリゴ糖には複数の種類があり、摂取には注意点もあります。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
食物繊維を摂取する
オリゴ糖と同じように、乳酸菌のエサになる成分に食物繊維があります。
食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。
乳酸菌のエサになるのは、水溶性食物繊維です。
では、不溶性食物繊維は必要ないのかというと、そうではありません。
不溶性食物繊維は、便のカサ増しをする作用があり、腸内環境が悪化する原因である便秘を防ぎます。
2つの食物繊維をバランスよく摂取すると良いでしょう。
摂取の方法や、注意点については、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
今回は、腸や乳酸菌に紐付けてインフルエンザを予防する方法についてご紹介しました。
腸が免疫力に大きく関わっていることは、あまり知られていません。
しかし、免疫組織の約60%が小腸に集まっていることを考えると、とても重要なことです。
手洗い、うがいなど一般的な予防方法の他に、今回ご紹介した方法を実践すれば、免疫力の一層の向上が期待できます。
S-PT84株、クレモリス菌FC株、L-92乳酸菌、といった乳酸菌を摂取して、インフルエンザを発症する確率を少しでも低くしたいですね。
寒い季節を健康に乗り越えられるように、これを機会に腸や乳酸菌にも関心を持ってみてください。