【高校生のときに発症】過敏性腸症候群で仕事ができない【体験談】
過敏性腸症候群、という病気をご存知ですか?
特に病変や炎症が見られないのに、
- おなかの調子が悪くなる
- 下痢または便秘
- 腹痛
- ガスが溜まっておなかが張る
- おならがひんぱんに出る
などの症状が現れ、ひどい場合は日常生活に支障をきたすこともある病気です。
私は現在56歳、過敏性腸症候群のタイプは下痢型とガス型(軽度)です。
過敏性腸症候群とは、高校一年のときから約40年の付き合いです。
現在も通院治療を続けながら、派遣社員としてフルタイムで働いています。
- 体験者の情報
- 名前:工藤涼子(仮名)
年齢:56歳
性別:女性
病気歴:40年
職業:派遣社員
過敏性腸症候群のタイプ:下痢型・ガス型(軽度)
記事の目次
発症したのは高校に上がった年の春
私が過敏性腸症候群を発症したのは高校に上がった年の春でした。
変なものを食べた覚えもないのにおなかが痛く、何日も下痢が続く。
腸炎かもしれない、と思って病院に行き、診察してもらうと異常なし。
細菌検査は異常なし、炎症所見もありません。
「とりあえず、消化剤を出しておきます。消化の良いものを食べるようにしてくださいね。腸を休めれば良くなってきます」
と医師に言われましたが、消化の良いものを食べても、消化剤を飲んでも、下痢とあまり激しくない腹痛は毎日続きました。
私が高校一年生の頃、今から約40年前にはまだ「過敏性腸症候群」という病名はまだありませんでした。
のんびりした田舎の中学から都会の進学校に進んだのが引き金になり、ストレスによる大腸炎を発症したと認識されていたようです。
カルテには「神経性腸炎」と書かれていたように記憶しています。
消化の良い食事:ベビーフード、おかゆ、豆腐、卵料理
消化の良い食事を摂るように、という医師の指示に従って、母なりに工夫してくれたのが、肉や魚の代わりのベビーフード。
ベビーフードは赤ちゃん用の離乳食なので、味がほとんどありません。
高校生の私にはとても食べられたものではありませんでしたが、栄養が偏ってもいけないので、なんとか食べていたように思います。
毎日の食事はお粥やパン粥に、豆腐や卵料理。
肉料理やソーセージなど、育ち盛りの高校生が食べたいものは皆無でした。
学校のお弁当にお粥は持って行けないので、柔らかい食パンにレバーペーストやジャムを塗って持参しましたが、消化が良いとすぐにおなかが空いてしまいます。
最初は我慢できなかった空腹にも徐々に慣れて、下痢が3ヶ月も続く頃にはすっかり少食になっていました。
また、「消化の良い食事」が続いたため、一学期が終わる頃には入学時と比べて6キロ痩せていたのでした。
夏休みを迎え、毎日続いた下痢が一旦治まったため、消化の良い食事がだんだんと普通の食事に戻ってきたのが嬉しかったのを覚えています。
その後も腹痛や下痢症状はあったものの、高1の春のような何ヶ月も続く下痢はなく、続いても一週間程度だったため、通院はせずに市販の消化剤(エビオスやビオフェルミン)を飲みながらなんとかやり過ごしてきました。
下痢症状が復活したのが就職した年
が、長期間の下痢症状が復活したのが就職した年。学生生活はなんとかやり過ごせました。
専門学校を卒業後、希望の会社に就職して社会人になったのは良かったのですが、どういうわけか「出世コース」と呼ばれる部署に配属されたプレッシャーからか、またまた長期の下痢が復活してしまいました。
今度は高1のときの経験があるので自分でコントロールできるつもりでしたが、仕事が忙しく、睡眠不足とも重なってしまい、夏には入社時よりも10キロも痩せてしまいました。
元々太っているわけではなく標準体重だったので、3ヶ月で10キロ痩せると体はついていかないし、服も合わなくなりました。
下痢症状が続き、体重が激減したため、病院に行くと、「ストレスのせいで下痢が続いてるんだから、仕事を辞めれば良くなります」と医師に言われ、入社わずか3、4ヶ月で仕事を辞めたいと本気で思うようになりました。
上司が便宜をはかってくれ、徐々に回復
「仕事を辞めたい」と上司に相談すると、「今辞めたらもったいない。あまり忙しくない部署に異動してはどうか」と提案され、上司の提案に乗る形で異動、症状はだんだんと治まって来ました。
上司が理解のある人だったので、その後もいろいろと気を使ってくれ、検査や通院にも便宜を図ってもらえたので、下痢症状が一ヶ月に一回程度にまで抑えられ、安定してきました。
一ヶ月に1、2回、1回あたり一週間以内の下痢症状とガスによる腹痛のみで、何ヶ月も続く下痢症状もなく安定していたので、特に通院するでもなく、症状が出たときのみビオフェルミンを服用する、そんな生活を長期間続けてきました。
下痢症状以外で辛かったのは、下痢が続くことによる「痔」。
昔はシャワートイレがまだ無くて、トイレットペーパーでお尻を拭くわけですが、一日に何度も下痢をすると、そのたびに紙でごしごししてしまうことになります。
トイレットペーパーの刺激でお尻は荒れて、ついには痔になってしまい、椅子に座るとお尻から脳天に向かって激痛が走るようになってしまいました。
痛みに耐えかねて薬局で痔の治療薬を購入し、トイレに入るたびに塗りなおし、夜寝る前には座薬を使う、そんな生活がしばらく続きました。
ガス溜まりするおなか。ズボンを2着用意しておく
痔のほかに辛いのは、ガスが溜まることによっておなかが張ること。おなかが張ると、ウエスト周りが大きくなるため、いつものスカートのホックが留まらなくなります。
なので、おなかが張った時用に、ワンサイズ大きなものも、クローゼットに入れていました。
朝は大丈夫だったのに、お昼頃から具合が悪くなっておなかが張ってくることもあります。そんなときは、輪ゴムをファスナーのつまみの穴に通し、反対の輪の部分をウエストのボタンに引っ掛けて留め、ずり落ちないようにして、上着をかけてごまかしました。
ズボンのときは、ベルトを緩め、ボタンやホックを開けたままにして、ファスナーは輪ゴムで留める。こんな方法で対処していましたので、輪ゴムとベルトは必需品でした。
友達や彼氏との付き合い。出産・子育て期間について
困るのが、友達や職場仲間との付き合いです。食事に誘われても、少しでも腹痛があるときは下痢の恐れがあるので断る。
友達や彼氏と旅行したくても、いつ下痢や腹痛に襲われるかわからないし、自宅と違って、おなかが張ったからといって気兼ねなくおならをすることもできない。
ガスが溜まったときの激しい腹痛をを思うと諦めるしかありませんでした。痔の症状もありましたし、私の20代は、酷い下痢こそ無かったものの、過敏性腸症候群に悩まされる日々でした。
出産・子育て期間でも、過敏性腸症候群は休んではくれません。妊娠時に酷い下痢をすると流産の可能性が高まる、という記事をマタニティ雑誌で見かけては恐怖していましたが、幸い何事もなく、おなかがぐるぐるいうと子供も動く、といった程度で済みました。
出産後、いつの間にか痔の症状が無くなっていたので、少し気が楽になりましたが、子育て期間も下痢とガスとの付き合いが続きました。
子供の保育園の遠足で遠出するとき。野外活動に出かけるとき。そんなときに限っておなかが痛くなり始めます。
なので、目的地に着くとまずはトイレの場所を確認し、いつでも駆け込める体制を整えておくようになりました。外出時のトイレの場所確認は、いつ「トイレに行きたい」と言うかわからない子供のことを考えても有効だったと思います。
過敏性腸症候群と思いきや、、、、
ずっとこんな調子で自分でコントロールしているつもりの生活でしたが、あるとき、過敏性腸症候群の症状だろう、と軽く見ていたら実は重病だったことがわかり、一ヶ月もの入院生活を強いられることとなりました。
いつものように下痢と腹痛が続くので、「あー、またか。 いつものヤツだな。今度は何日ぐらい続くだろう」などとぼんやり考えながらいつも通りに仕事と家事をこなしていました。
腸に刺激を与えないほうが良いのはわかっていたので、消化の良いものを少量食べるようにして、激しい下痢をやり過ごすつもりでいました。
が、一週間経っても下痢と腹痛は治まらず、少しでも何か食べるとすぐに腹痛に襲われるので、食べるのが怖くなり、あまり食べずにほとんど水しか口にしない状態になってしまいました。
「出血性大腸炎」で1ヶ月入院
そんな生活が10日も続いた頃、今度は貧血の症状が出始め、布団から起き上がることも難しいぐらい体力が落ちていました。
食べていない生活なので、当然下痢はましになっています。が、ある朝、下痢ではない固形の便が出ました。「食べてないのに何が出たんだろう?」 と便器を覗き込むと、水がたちまち血の色に染まります。
人生初の血便に、あわてて近所の市立病院に行き、消化器内科を受診しました。検査を受けたところ、腸からの出血でひどい貧血になっているとのこと。
出血性大腸炎、ということで、病原性大腸菌O-157によるものかもしれないと、検査もしましたがそちらは問題ナシ。
ひどい貧血で輸血が必要ということで緊急入院し、毎日検査が続きましたが、大腸内に大量の出血があることがわかっただけで、出血箇所にあるはずの傷も見つからず、原因もわからないまま絶対安静と絶食。
24時間点滴が10日間、その後重湯から徐々に復食して約一ヶ月かけて七分粥まで回復、貧血の数値も改善されたため退院となりました。
入院中の問診で、過去に「過敏性大腸炎」でひどい下痢が数ヶ月続いたことがある、回答したので、退院後は予後の観察と過敏性腸症候群の治療をしましょう、と言われ、現在まで10年以上、引き続き治療をしています。
過敏性腸症候群だから下痢が続いてるんだ、と決め付けたため病院に行くのが遅れ、大変な目に遭ってしまいました。
入院をきっかけに大食い、刺激物、脂肪の多いものは控えるように
自己流のやり方では、症状が出たときだけビオフェルミンやエビオスを服用し、食事を消化の良いものにしていましたが、下痢や腹痛がないときは平気で刺激物を食べたり、大食いをしていました。
が、入院をきっかけに大食い禁止、刺激物、脂肪の多いものを控えるように指示されたため、退院後一度も焼肉には行っていませんし、キムチなども口にしていません。
もともと食べるのが好きな私には、食事制限があるのはとても辛いのですが、おなかが痛くては美味しいものも美味しくなくなってしまうので、一回に食べる量を減らしたりして調節しています。
退院前に看護師さんから食事指導があったのですが、当時は出血性腸炎の予後の食事指導マニュアルがなかったため、潰瘍性大腸炎の食事を参考に、刺激物を避ける、脂肪の多いものを控える、繊維の多いものを控える、油脂をオメガ-3型のものにする、といった指導を受けました。
40年間注意していること
過敏性腸症候群は、腸に器質的疾患があるわけではないので、手術でよくよる、薬で劇的に改善される、というものではありません。
私のように発症から40年以上経っても、定期的に通院し、検査を受けて治療していても、完治するわけではありません。
一生付き合うつもりで、苦痛をやりすごす方法を自分なりに身に着けていかなければならないと思います。
過敏性腸症候群は克服できるものでも完治するものでもありませんが、日常生活のちょっとした工夫で多少なりとも苦痛を減らすことはできます。私なりに実行していることは、以下のとおりです。
消化の良い食事
症状が出ているとき以外でも、ふだんから消化の良いもの中心の食事にすること。食物繊維は体にいいので摂取したいのですが、不溶性食物繊維(野菜の筋など)を控えめにして、水溶性食物繊維(果物に含まれる、ペクチンというジャムをとろりとさせる成分や、海草の成分)で摂取するようにすれば腸に与える刺激が少なくなります。
油脂の多い食べ物は少量にする
絶好調のときはトンカツなどの揚げ物は一人前を食べても平気ですが、下痢のときは当然禁止。一番多い「並」の状態のときは、揚げ物を食べたことで悪くなる可能性がないとは言い切れません。
なので、自宅で食べるときは、揚げ物は自分の分は少なめにしたり、外食では家族とシェアして半人前だけ食べるようにしています。
また、ケーキなど洋菓子や、デニッシュなどの菓子パンも油脂が多いので控えたい食品ですが、甘いものに目がない私はケーキの誘惑に勝てる気がしません。
そんなときは、友達や家族とシェアしてケーキや菓子パンは半分だけ食べるようにします。全く食べないでいると、これもまたストレスになりますが、半分も食べればちゃんと満足できます。
ヨーグルトなどの乳酸菌
乳酸菌も腸内環境を整えるとされるので、お勧めの食べ物ですが、体質に合う合わないで個人差があり、乳酸菌飲料やヨーグルトを食べておなかの動きが活性化し、腹痛や下痢が起こる場合もあるようです。
体質に合えば、乳酸菌だけでなくたんぱく質やカルシウムも摂取できるので、毎日食べたい食品です。
暖かい飲み物
下痢の症状が出ているときは、水分不足になり勝ちなので、水分を摂取するのですが、暖かい飲み物がお勧めです。
水分補給のため、と、冷たい飲み物を一気に飲むと、おなかの中が冷えてしまい、腸に刺激を与えることになり、腸がぐるぐる動き出して痛みを感じることになります。
暖かい飲み物だとおなかの内側も暖まり、腸も余分な動きをしないようで、じんわりと暖かさが広がってゆったりしてきます。夏でも、冷房の効いた室内では暖かい飲み物がお勧めです。
トイレの確保
職場や外出先では行きたいときに気兼ねなく行けるように、予め場所を確認しておきます。
駅やショッピングモール、百貨店など、いずれもきれいでシャワートイレが完備さているところが多く、消音システムもあるので、下痢だけでなく、溜まっていたガスを出すのにも最適です。
車を運転するなら、駐車場(できれば無料)がある大きなスーパーやショッピングモールを確認しておくなど、自分なりのトイレ地図を作っておくと安心です。
旅行のときは、トイレ付きの乗り物をチョイスしましょう。たとえ行くことがなくても、いつでも行ける場所にトイレがある、と思えることが安心につながります。
特急に乗らない
下痢症状が出ているとき、下痢性の腹痛があるときの通勤・通学は、長時間停車しない特急を避けて、各駅停車に乗りましょう。 駅には必ずトイレがあります。 一駅ごとに停車する各停のほうが安心です。
薬の携帯
過敏性腸症候群と診断され、痛み止めや下痢止めが処方されたら、なんともないときでも数錠は携帯しておきます。
たとえ飲まなくても、お守り代わりに薬を持っていれば安心です。 薬も何もない、という事態に陥るとパニックになってしまい、症状を悪化させる引き金になってしまいます。 薬は必ず携帯しましょう。
ストレス発散
私の場合、カラオケやショッピングで発散したり、映画を見たり、小説やマンガの世界に入り込んだり、一人で旅行に出かけてみたり。 また、趣味の習い事が良い気分転換になっています。
まとめ:可能性がある方は早めの診察を。
現在、下痢が続く、ガスでおなかが張って辛い、下痢と便秘を繰り返すなど、何が原因でおなかの調子が悪いのかわからない。子供の頃からおなかが弱いと言われてきた。
そんな過敏性腸症候群の可能性がある方は、まず医師にかかり、確定診断をもらうことからはじめることをお勧めします。
過敏性腸症候群とわかると、下痢のたびに感染症を疑う必要もありませんし、無駄な検査や治療を避けることができます。
また、異常が出たときにすぐに担当医に相談できるので、重大な疾患があっても早期に発見してもらえるので安心です。
定期的に通院して、投薬治療を受けると、消化剤や腸の動きをおだやかにする薬と、痛みや下痢が激しいときに服用する頓服が処方されます。
あまりにも長期間下痢や腹痛が続き、仕事もできないくらいにひどいときには、ストレスに過敏に反応するのを抑える意味で、弱い精神安定剤薬を処方される場合もあります。
薬をきちんと飲んでいれば、かなり症状を抑えられます。私の場合、定期的に通院、治療を受けるようになって、激しい腹痛や下痢はかなり減りました。
今まで、激しい下痢が一週間以上続くのはざらでしたし、そうでなくても一週間に最低3日はひどい下痢と腹痛、ましな日は数日程度しかありませんでした。
が、今では調子の良いときだと激しい下痢は一ヶ月に1、2回ぐらいにまで減りましたし、おなかの調子が絶好調、という日も時々あるようになりました。
現在では症状が安定しているという理由で、通院は3ヶ月に一度に減っています。まだまだ長い付き合いですが、ゆったりと自分のペースで向き合っていきたいと思います。
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