過敏性腸症候群と向き合うこと
過敏性腸症候群という病気を聞いたことがありますか?
過敏性腸症候群とは、慢性的に腹痛・腹部不快感をともなう下痢や便秘を繰り返す病気です。IBSと呼ばれることもあります。
症状によって「下痢型」、「便秘型」、「混合型」に分けられます。
私は現在20歳で、過敏性腸症候群のタイプは「混合型」です。ガス症状も軽度ですがあります。
過敏性腸症候群には中学生の頃にかかり、約8年間の付き合いです。
現在は大学に通っています。中学生、高校生のときほどひどい症状は出ていませんが、それでもまだ普通の人と同じ生活をするにはほど遠い状況です。
- 体験者の情報
- 名前:佐藤優子(仮名)
年齢:20歳
性別:女性
病気歴:8年
職業:大学生
過敏性腸症候群のタイプ:混合型・ガス型(軽度)
記事の目次
1.トイレの常連だった中学時代
私が過敏性腸症候群を発症したのは中学1年生の頃でした。下痢と便秘を繰り返すようになり、朝学校に行かなければならないのにトイレから出られないこともたびたびありました。
冷や汗をかきながら通学し、学校に着いたとたんトイレに駆け込む日々でした。一緒に登校する友達に気づかれないように、おならの音はできるだけ出さないよう努めていました。
学校ではほとんど毎日トイレに通っていました。
私の場合、下痢の症状が出ているときは内容物を出しさえすればある程度の痛みは治まっていました。
過敏性腸症候群を患った原因はわかりません。一般にはストレスのせいだと言われていますが、中学生の頃は大きなストレスはなかったように感じます。
ひとつ考えられることは小学校から中学校に進学する際に転校したことでしょうか。
以前通っていた小学校は私には合わなかったので、むしろ転校したことは喜ばしいことだと思っていたのですが…。
ただ、この頃はまだ自分が過敏性腸症候群だとは知りませんでした。そもそもその病気自体を知らなかったのです。
2.過敏性腸症候群は他人に理解されない
私が「おなかが痛い」と、母に言って学校を休ませてもらった日がありました。その日は母に近所の内科に連れて行かれました。
ひととおり症状について話を聞いた先生の一言。
「うん、なんともないね」
私は子供心ながらにショックを受けました。こんなにおなかの調子が悪くて、なんにもないのか、と。
もうひとつショックだったのは、そう言い放った先生が「学校をさぼりたいから仮病を使っているんでしょ?」と言いたげな表情をしていたことです。
母は母で、私に「今からでも学校に行く?」と勧めてきました。
次の日担任の先生におなかどうだった?と聞かれました。
なんともなかったです、とはばつが悪くてとても言えず、私は苦し紛れに「生理痛だったみたいです」と答えました。
「生理痛なんかでいちいち休んでたらこの先大変よ?」と半ばあきれたように言われ、私は泣きそうになりました。
おなかのこの痛みは誰にも理解されない。そう気づいた私はおなかの痛みを他人に訴えるのをやめ、上記で述べました通り学校で便を出して痛みを和らげるしかない、と考えるようになりました。
3.相性の悪い食べ物は汁物?
おなかの様子が人と違うと気づいてから、私は朝食を食べないようになりました。出すものがなければおなかが痛くなることもないだろうと考えたのです。
しかし母は三食しっかり食べないといけない、という考えの持ち主だったので、そんな私に朝からコーンスープを出してくれるようになりました。
コーンスープは好きだったので、それくらいなら、と飲んだのが間違いでした。家を出てしばらくたつとおなかがギューッと痛くなり、トイレに行きたくなりました。
下痢の症状が出たのです。しかも普段よりも痛みがひどく、私は足早に学校へと向かったのでした。
その経験から、私はコーンスープは自分のおなかと相性が悪いのだと学びました。ほかにみそ汁も試してみましたが、やはり下痢がひどくなるだけでした。
母にはその旨を伝え、私は朝からは何も摂らないようにしたのです。
今思い返してみれば、起床時間が遅かった私は起きてすぐに飲食物を口にしていたため、おなかに負担がかかっていたという可能性が考えられます。
汁物との相性が悪かったのはもちろんだと思いますが、生活習慣も見直すべきだったのかもしれませんね。
4.常にトイレへのルートを確保すること
高校生の頃、おなかの調子は悪くなる一方でした。進学校に進んだ私に待っていたのは大量の課題と度重なる模試。
毎日の課題のせいで睡眠不足が続き、また模試のような緊張する場面もたくさんあったためおなかのコンディションは最悪でした。
一番ひどかったときには途中で模試を抜け出してトイレに行き、半分以上を白紙のままで提出したこともありました。
しかしこの頃はおなかの痛みを解決するためにトイレに行くことをいとわなくなっていた時期でもありました。
言い換えれば、たとえ授業中であってもおなかの痛みを我慢せずトイレに行くことができるようになっていたのです。
中学生の頃は恥ずかしくてトイレをずっと我慢していたりしたのですが、高校生になってどこかで吹っ切れたのです。
そのおかげか、以前よりもおなかに対する不安は少なくなっていました。
「おなかが痛くなってもトイレに行けばいいや」
そう思える余裕をもつことが、ストレスを減らす手助けになっていたのではないかと思います。
そのような考え方ができる環境作りについてなのですが、まず私が大切にしていたのはトイレへのルートを確保しておくことです。
トイレの場所を把握することでおなかの緊急事態に備えるのです。そしてもう一つ、時間に余裕を持って行動することも念頭に置いておきました。
別の項目でも述べましたが、私の場合、下痢症状が出ているときはとにかく、だしさえすればある程度痛みが治まることがわかっていたので、朝早く学校に行って誰も来ないようなトイレでゆっくりと用を足してしのいでいました。
5.過敏性腸症候群を知った大学でのカウンセリング
大学の教養科目であった健康科学。あるとき授業の一環としてアンケートに回答しました。
内容は「おなかの不快感について」でした。
項目については詳しいことは覚えていないのですが、例えば「おなかの不快感のせいで私生活に支障がでていると感じることがある」などといった、いわゆる過敏性腸症候群の症状について訪ねるアンケートだったのです。
その当時はまだ繰り返す下痢と便秘、腹痛に悩まされていたのでほとんどの項目にチェックを入れていたと思います。後日大学の保健センターに呼ばれてカウンセリングを受けることになりました。
カウンセラーの方は、アンケートの解説を丁寧に行ってくださいました。
「佐藤さんは過敏性腸症候群の疑いが強いね」
と言われ、初めて自分が過敏性腸症候群であると知りました。
その後病院に行き、症状をお医者さん(中学生の頃にかかった病院とは別の病院)に伝えると過敏性腸症候群との診断を受けました。
薬も処方してもらい、中学生の頃から抱えていた、悩みの解決の糸口がやっと見つかったように感じました。
大学でその授業を受けていなかったら今も悩み続けていたのかと思うと、授業を受けられたことに対しての感謝しかありません。
それからは少し気分も明るくなり、過敏性腸症候群との向き合い方をよく考えるようになりました。
6.まとめ:過敏性腸症候群かな?と思ったら病院へ!
過敏性腸症候群という病気はあまりメジャーな病気でないように思います。そのため人に理解されなかったりしてつらい思いをすることもあるでしょう。
また逆に過敏性腸症候群の人を傷つけてしまうこともあるでしょう。しかし誰もがストレスを抱える現代社会、誰が発症してもおかしくありません。
おなかの不快感が続くようなら最寄りの医療機関に相談しに行くことが望ましいと思います。少しでも情報があれば気分も和らぎます。
過敏性腸症候群と診断がされれば、本人の症状にあった薬が処方されて過敏性腸症候群の症状がかなり改善するでしょう。
薬があれば不安な気持ちも抑えられると思います。私自身も薬があると精神状態が安定し、症状も軽くなります。
現在ではひどい腹痛は二週間に1回ほどにまで治まっています。薬の効果と、薬がある安心感によるものだと考えています。
過敏性腸症候群の原因は解明されてはいませんが、ほとんどストレスによるものだと言われています。
私も精神の安定を1番に考えながら、日々過敏性腸症候群と付き合っていきたいと思います。