腸内細菌に悪い影響を与える7つの原因

あなたは腸を大切にしていますか?

「腸を大切にってどういうこと?」と思われている方が多いのではないでしょうか。腸のことを意識しないでいると、腸を大切にすることはできません。

今日は腸内環境を悪くする原因について説明ていきます。

①腸の状態を無視する

腸は時々動いたり、音を立てたり、痛みを発したり、下痢のように便を一気に排せつさせたり、毎日さまざまなメッセージを私たちに送っています。

また、大便は「大きな便り」と書きますが、昔の人は便を観察することによって腸や身体の健康状態をチェックしていたんですよね。

ところが、便座の変化や水洗トイレの普及によって、自分の大便を観察しないという人も増えたことでしょう。

腸の状態を無視するとは、腸からのメッセージや大便の様子に合わせて、食事や生活パターンを変えないということです。腸の環境をよくするためには、まず腸や便の変化に敏感になることです。

以下の項では、腸からのメッセージの意味やその対処法について説明していきます。

②腸のことを知らない

腸のことを知らないと、腸がせっかくメッセージを送っているのに無視せざるを得ないということになります。腸は最高に敏感な組織です。口から肛門までの消化管はすべて内腔が外と接しています。

食物だけではなくさまざまな微生物や化学物質などの外敵と常に接しているということです。動物が死ぬとまず腸から腐り始めます。

このことは、生きている間は、腸が外界からの細菌などの敵を常に防いでいるということを示しているのです。

腸をはじめとする消化管の粘膜は「消化管バリアー」を作って、常に外界からの異物に対して目を光らせているのです。この消化管バリアーは原始的な線虫などにも備わっており最も基本的な生体防御システムなのです。

さらに、消化管粘膜にはさまざまなセンサーが取り付けられており、細菌が作る毒素や外界から入っていく化学物質に対して敏感に反応する仕組みがあり、ひとたびこのセンサーが反応すると大量に腸液が分泌されて腸の内容物が一気に排せつされます。

この現象が下痢なのです。また食べ過ぎて消化しきれなかった場合も別のセンサーが働いて下痢を引き起こします。

下痢を起こさせるために腸は懸命に働きますので、下痢の後は半日程度食事を控え腸を休ませる必要があります。ただし、下痢によって大量に腸液が失われていますので、水分と電解質(塩など)を補う必要があります。

アイソトニック飲料などは、下痢の後の最適な飲み物です。

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③消化について知らない

口から肛門までの管のことを消化管と言います。食物は口から入って消化管を旅して肛門から便として排せつされます。その間に食物は消化され栄養が吸収されます。

この消化という過程をよく知らないと腸をいたわることができません。

消化管は口から始まり、食道、胃、十二指腸、小腸(空腸、回腸)、大腸(結腸とも言います)、S字状結腸、肛門まで続きます。大人の場合、約7メートルの長さになります。

消化は口から始まる

口から入った食物は歯で細かくそしゃくされ、唾液と混ざり合うことで、唾液中のアミラーゼという酵素によってでんぷん成分が少し消化されます。

またよくかんでいる間に、胃や腸が食物が入ってくる準備をすることができます。

早食いなどでよくかまないで大きな塊のまま飲み込むと、胃や腸に負担がかかり、その結果未消化の食品が腸のセンサーに反応すると下痢の原因にもなります。

胃液は酸性でこそ働く

胃に入った食物は、胃の中で強酸性の胃液と混ざり合いペプシンという蛋白(たんぱく)分解酵素によってタンパク質が大まかに分解されます。

ペプシンは強酸性の環境でしか働くことができない酵素ですので、食事の時に炭酸などを含むアルカリ飲料を大量に飲むと胃液が薄まったり、ペプシンが働きにくくなったりして、消化が悪くなります。

十二指腸は消化酵素の宝庫

胃での消化は完全ではなく、半消化の食物が十二指腸に運ばれます。胃液と混ざった酸性の食物が十二指腸を刺激することで、膵臓(すいぞう)から膵液(すいえき)が分泌されます。膵液(すいえき)は胃液と逆の強アルカリ性で、胃から来た食物を中和します。

また膵液(すいえき)にはトリプシン、リパーゼ、アミラーゼといったタンパク質や脂肪、でんぷんを分解する酵素が大量に含まれており、これらの酵素によって蛋白(たんぱく)はアミノ酸、脂肪は脂肪酸とグリセリン、でんぷんはブドウ糖まで完全に分解されるのです。

肝臓で作られ胆のうにためられている胆汁は、膵液(すいえき)と同時に十二指腸に放出され、脂肪を細かくしリパーゼが働きやすくする役割を演じています。

小腸で消化吸収が行われる

十二指腸で消化された栄養素は、小腸から吸収されます。つまり、アミノ酸や脂肪酸、ブドウ糖といった低分子まで消化された栄養素を小腸の粘膜上皮細胞が吸収し血中に放出するのです。

食物が十二指腸から小腸にある間はたくさんの腸液が分泌され、腸内の食物が消化酵素などとよく混ざるように腸自体も活発に動きます。この時にたくさんの血液が消化管に集中させる必要があります。

よく食後2~3時間はゆっくりと過ごすのが良いというのはこのためなのです。

大腸で水分吸収

小腸での栄養素の吸収が終了すると、消化しきれなかった食物残渣(ざんさ)が大量の腸液と共に大腸に流れ込みます。大腸では主に水分と電解質を吸収します。

下痢などで便が液状なのは、大腸で水分吸収をしないまま排せつされるからで、先に大量の水分と電解質が失われると言ったのはこのためです。

大腸で水分を吸収された食物残渣(ざんさ)は腸内細菌が繁殖し大便になります。大便は食物残渣(ざんさ)と腸内細菌からなっています。食事をしてから大体12~16時間で大便として肛門から排せつされます。

大腸の動きが悪かったり、食物残渣(ざんさ)の量が少なかったりすると大便が大腸に長く停滞することになります。この状態が便秘なのです。

便秘の時には大腸が動きやすくなるように軽い運動をして、ふん便質が多くなるように消化されにくい食物繊維をたくさん含む野菜を多くとるようにしましょう。

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④腸の住人について知らない

腸には住人がいることを知っていますか?この住人のことを知らないとやはり腸の環境は悪くなってしまいます。腸の住人とは「腸内細菌」のことです。

腸に住み着いている腸内細菌は腸内の環境を整えるのに大変重要な役割を担っておりますが、少しお手入れが必要なのです。このお手入れを怠ると腸の環境が悪くなってしまうのです。

腸内細菌は100種類以上のさまざまな細菌から構成されており、色とりどりの花が咲く華やかなお花畑に例えて腸内フローラとも呼ばれています。

成人1人当たり60‐70兆個の腸内細菌が生息しており、大便の容積の約半分が腸内細菌またはその死骸が占めています。

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腸内細菌の機嫌がいい場合

腸内細菌は人間が単独では分解できない食物繊維を分解してエネルギーに変え、人間が合成できないビタミン(ビタミンB群の一部やKなど)などを合成し、消化や栄養的側面から人間を支えているのです。

また、腸内細菌の存在は人間の免疫系の教育に密接に関与しており、抵抗力強化にも不可欠なのです。この他にも多くの場面で腸内細菌は人間のために働いていることが分かっています。

腸内細菌の機嫌を損ねた場合

腸内細菌は野菜に多く含まれる食物繊維をエサにして増殖し、先のような人間にとって有益な働きをすることができるのですが、肉食が中心になり野菜からの食物繊維が減少すると途端に機嫌が悪くなります。

悪玉菌の働きが活発化し、肉のタンパク質を構成しているアミノ酸を腐敗させアンモニアやインドール、スカトール、硫化水素など強烈な悪臭を発する有害物質が大量に産生されるようになります。

この状態が長く続くと体調が徐々に悪化する場合があります。

肉食が中心になり、野菜の摂取量が減ると便やおならの臭いがくさくなるのは、腸内細菌のご機嫌が悪くなっている証拠ですから、野菜や善玉菌を含むヨーグルトなどを多く摂るように心掛けましょう。

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⑤腸内細菌をいじめる

腸内細菌が身体にとって不可欠な存在であることを前項で述べました。しかし、現代社会に生きる人々の腸内細菌は常にいじめられているのです。

コンビニ弁当やさまざまな加工食品に含まれる保存料や添加物のほとんどが腸内細菌には毒なのです。多くの日本人はこの毒を多かれ少なかれ毎日摂っているのです。

腸内フローラを華やかにするためには、添加物の入った食品をなるべく食べないようにすることです。

さらに、水道水に含まれる塩素も腸内細菌にとっては毒です。水を大量に飲むときはなるべく塩素を含まないミネラルウオーターを飲むようにしましょう。

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⑥腸と全身の関係を知らない

腸からは栄養素の他にも大量の物質が吸収されます。腸内細菌が不機嫌になった時に産生される有害物質も腸から吸収され血液の中に溶け込み全身に回ります。

腸からの有害物質は、肝臓に負担をかけたり、肌荒れの原因になったり、アレルギーや免疫機能を悪くさせる原因になるなど、全身臓器にじわじわと悪影響を与えます。

その結果、体調が徐々に悪くなってしまいます。強烈な悪臭を伴うため、体臭の原因になり、全身から何となく便の臭いが漂います。

また、長期間に亘って腸内細菌を不機嫌にしておくと、有害物質が常に腸を刺激し、大腸がんの原因にもなるとも言われています。このように腸は栄養の吸収以外にも全身の健康状態に密接に関わっているのです。

⑦腸にストレスを与える

「胃や腸はストレスに弱い」とか「ストレスで胃が痛くなった」とか「便秘を解消するにはストレスをためないこと」などと聞いたことがあると思います。いずれもが正解です。

腸はストレスに弱く、ストレスを与え続けると腸内環境は確実に悪化します。

ストレスには物理的なストレスと精神的なストレスがありますので、二つ分けてそれぞれのストレスがどのように腸に影響を与えるか説明します。

物理的なストレス

①暴飲暴食

腸をはじめとする消化管には処理できる量が決まっています。これを超えて食べる、さらにお酒を飲むと消化管にストレスを与えることになります。

食べ過ぎて腸の処理能力を超えると、腸は自らの判断で消化することをあきらめて大量の腸液で消化管の内容物を排せつします。つまり下痢を起こさせるのです。

お酒の飲み過ぎも腸内細菌のバランスを崩してしまいます。

食べ過ぎ飲み過ぎると、腸からグルグルという音が聞こえてきます。この状態でさらに食べたり飲んだりすると、腸には強いストレスがかかり下痢などの症状を呈すことになります。

ですから、腸からのメッセージをきちんと受け止めて、それ以上腸に負担をかけないようにすることが大切なのです。

②腸を冷やすこと

腸は冷やすと熱を放散しないように動きを止めてしまいます。さらに冷やすとセンサーが働いて、下痢を起こし腸の内容物を洗い流してしまいます。

その逆に便秘になることもあります。

腸を冷やさないためには、ゆっくり入浴することと、入浴時におなか全体をゆっくりマッサージすることが有効です。

忙しいのでシャワーで済まそうとか、おへそを出した衣服を好んで着ることは、温かさを求めている腸には少しつらいことなのです。

精神的なストレス

腸の外側には神経が網の目のように張り巡らされています。網タイツをはいた女性の脚を想像していただくとよいと思います。この神経は脳とつながっており、腸と脳は密接に連携しています。

脳の動きは腸に影響をおよぼしているのです。

脳で感じた精神的ストレスが腸に影響を与えるのはこのためです。腸に精神的ストレスがかかると下痢になったり、便秘になったり、時には潰瘍を作ったりすることがあります。

精神的にストレスをなるべくためないようにしましょう。いつもニコニコ心安く過ごすことが腸には一番いいのです。

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まとめ:

ここまで腸内環境を悪くする原因について説明してきました。よくよく考えてみると現代社会が抱えている問題を写し取っているように見えます。ストレス然(しか)り、加工食品然(しか)りです。

つまり、腸のことを意識しないで生きていると、自然と腸に悪い方向に進んでしまうのです。

確かに、1970年代までは日本にはあまり見られなかったクローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸炎は1980年以降爆発的に増加しています。また大腸がんも1980年代から急増しています。

腸は極めて精巧な臓器であり、かつ外部の環境の影響を直接受けながら、巧みにバランスを取りながら機能しています。そしてとても賢い臓器です。ピンチの時には必ずメッセージを送ってきます。

腸から送られてくるメッセージに耳を澄ませ、敏感になることが皆さんの腸をいたわる第1歩なのです。

この記事の筆者

腸内細菌博士
1977年生まれ。京都大学・大学院にて分子細胞生物学を専攻。腸による脂質代謝や栄養吸収を細胞レベルで研究、また腸に関連する疾患の予防、治療方法の基礎研究に従事。

ほか、腸の働きと関連性のある自律神経系や免疫システムについては、現在も米国科学雑誌等で最新研究動向をウォッチ中。現在、米国にてMBA留学中。

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