腸内環境とアトピー性皮膚炎の関係性

アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなど、さまざまな皮膚・肌のトラブルでお悩みの方も多いのではないでしょうか。

「薬もいろいろ試したし、化粧品も変えてみたけどなかなか良くならない」、「病院通いや漢方を購入したり治療にお金がかかる」など苦労されている声をよく耳にします。

このような皮膚炎など皮膚・肌のトラブルは、そもそもなぜ起きてしまうのでしょうか。

原因を理解していれば対処もしやすくなりますし、炎症が起きにくいように根本から改善することもできますが、実際には皮膚炎が発症する原因はさまざまで特定することが難しいようです。

ただ、原因の特定は難しくとも、日々の生活の改善や少しの工夫によって発症してしまった皮膚炎の症状を抑えることは可能なのです。

そして、それには皮膚・肌のトラブルと深い関連のある腸内環境を整えることが何より重要なのです。

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なぜ腸内環境と皮膚炎が関係しているのか、なぜ腸内環境を整えることで皮膚炎の症状を抑えることができるのか、ここではアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、肌トラブルといった代表的な皮膚炎を取り上げながら説明していきます。

腸内環境とアトピー性皮膚炎の関係性

皮膚炎の代表として挙げられるアトピー性皮膚炎。アトピーとは湿疹やかゆみを伴う症状で、その症状が改善したり悪化したりを繰り返しながら、完治させることが難しい慢性的な皮膚炎の1つです。

一般的に大人であれば6ヶ月以上、乳幼児だと2ヶ月以上、症状が続くと「慢性」と定義されます。

日本人の約1割がアトピーだと言われるほど、非常に多くの人を悩ませている病気で、いまだに完治のための万能な治療法が確立されていない病気です。

アトピー性皮膚炎が発症した場合は、ステロイド薬などの処方によってかゆみや湿疹を抑えるといった対処療法が一般的です。

アトピーは、腸内で産生される「IgE抗体」と呼ばれる物質が増え過ぎることによって発生すると考えられています。

IgE抗体とは、ウィルスや細菌といった異物の侵入から体を守ってくれる抗体と呼ばれる物質の1つですが、急激に数が増加したり、正常時以上の存在量となると私たちの身体に炎症や湿疹などの症状を引き起こす厄介な物質。

皮膚炎以外に、花粉症の症状にもこのIgE抗体が関係していることが知られています。

IgE抗体の増加がアトピーのような皮膚炎を起こす要因は、細胞に付着したIgE抗体と体外から侵入した抗原が結合する過程において、ヒスタミンというかゆみや痛みの原因となる物質が放出されるから。

アトピー性皮膚炎の症状がある人は、体内のIgE抗体の量が多く、結果的に体内で生産されるヒスタミンの量も多くなってしまっているのです。

このIgE抗体は腸内で産生されるものですがから、IgE抗体の量と腸内環境の状態には密接な関係があります。

疲労やストレス、食生活の変化によって腸内環境が悪化すると、IgE抗体が過剰に産生されてしまい、アトピー性皮膚炎の症状が悪化してしまうのです。

つまり、アトピーの症状を軽減するためには、腸内環境を良い状態に保ち、IgE抗体が多く産生されないようにすることが重要なのです。

腸内環境と食物アレルギーの関係性

アトピー性皮膚炎以外にも皮膚炎を引き起こすものとして、食物アレルギーがあります。食物アレルギーとは特定の食べ物を食べるとかゆくなったり、痛くなったり、時には発作を起こす可能性もある病気。

このアレルギー反応のメカニズムは、前述したアトピー性皮膚炎の発症メカニズムと同様なのです。

アレルギー反応を引き起こす食物を摂取すると、胃や腸で消化・吸収されながら、アレルギーの原因物質が血管に入り、皮膚周辺の毛細血管へと移っていきます。

皮膚周辺に存在するIgE抗体は、このアレルギーの原因物質を外敵とみなし攻撃、つまり免疫反応を開始します。

アトピーと同様、体内のIgE抗体が多い場合は多量のヒスタミンが生み出されるため、アレルギーによりかゆみや、痛みを伴う皮膚炎が発症するのです。

アレルギーの原因物質

このようなアレルギー反応を引き起こす物質としてよく知られているものの1つが、タンパク質。

本来タンパク質は胃や腸で分解されて、それによって生成したアミノ酸が腸から吸収されて血管を通り、全身に栄養分として運ばれるものです。

ところが、何らかの原因で分解されないタンパク質が血中に入り、皮膚近くまで運ばれてしまうとIgE抗体と反応してアレルギー症状を引き起こすのです。

タンパク質が分解されないまま吸収されてしまう原因の1つは、腸壁に穴が開いてしまうこと。

腸の壁面にある絨毛と呼ばれる突起には、栄養分を吸収するための小さな穴が開いており、食物酵素により分解されて小さくなったアミノ酸のような物質だけが通り抜けられるようになっています。

ところが、悪玉菌が増殖し、腸内環境が悪化するとこの腸壁の穴が広がってしまい、未消化のタンパク質が通り抜けられるようになってしまうのです。

これがひどくなると「リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)」という病気を引き起こします。このような病気や、皮膚でのアレルギー反応を防ぐためにも、善玉菌優位な腸内環境を維持することが重要なのです。

また、砂糖もまたアレルギーの原因物質となり得ます。砂糖アレルギーの代表的な症状は頭がぼんやりしたり、眩暈を起こしたりなどで、アトピーとの関わりも深いのです。

アトピーを発症している人の中には、急激な生活環境の変化や疲労・ストレスを体験している人が多く、その解消のために甘いものを多く摂取してしまう傾向があるようです。

このため、アトピーの人が砂糖アレルギーを併発することがあります。

砂糖の過剰摂取は、腸壁の粘膜細胞を傷つけてしまい、腸壁の穴を広げ、さまざまな有害物質が分解されないまま全身に運ばれ、アレルギー反応を引きこすことになります。

このため日々の生活リズムをできるだけ整え、腸を正常な状態に保ちながら、腸壁が傷つかないようにケアをしていくことが、アレルギー対策には非常に重要になってくるのです。

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腸内環境と肌トラブルの関係性

皮膚炎やアレルギーと同様、肌トラブルについても腸内環境を良い状態に保つことで症状が改善されたり、良好な肌を保つことができます。
肌トラブルを抱えている方が同時に頭を悩ませていることが多い、便秘。実はこの便秘が肌トラブルの原因の1つと考えらえれます。

便秘の状態になると腸内の腐敗物質や有害物質が便として体外に排出されないため腸内に長く留まることになり、これらの有害物質が腸壁から吸収され血管を通して肌の近くまで運ばれてしまい、肌トラブルを引き起こすのです。

同時に、腐敗物質は悪臭を放つため、肌トラブルに加えて体臭がきつくなるといった問題も引き起こしてしまいます。

便秘になって腸内環境が悪化してしまうのは、睡眠不足やストレスなどにより腸の蠕動運動が弱まってしまい、便を輩出する力が弱くなってしまうから。

肌トラブルを防ぐには、睡眠・休息を十分にとったり、食物繊維を豊富に含んだ食事をとるなど、腸内環境を良い状態に保つ工夫が必要なのです。

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腸内環境を整え、皮膚炎の症状を改善するには

アトピー性皮膚炎やアレルギー、肌トラブルなどを防ぎ、健康な肌を維持するためには、前述の通り腸内環境を良い状態に保つことが何よりも重要。

良い腸内環境とは、善玉菌・悪玉菌・日和見菌がバランスよく存在している状態で、正常時よりも悪玉菌が増殖、悪玉菌の存在比率が高くなると腸内環境は悪化することになります。

腸内を良い状態を保ち、皮膚炎が発症しないようにすることがもちろん大切なのですが、腸内環境が悪化、皮膚炎が発症してしまったとしても遅くはありません。

腸内環境の状態を改善して、皮膚炎の症状を軽減するためにできることはたくさんあるのです。例えば、食事の見直し。

腸内環境が悪化して悪玉菌が増殖、その分善玉菌が減少してしまったら、食事によって善玉菌を補い、増やすことが可能です。

ヨーグルトはビフィズス菌や乳酸菌と言った善玉菌を多く含んでおり、積極的に摂取することは善玉菌を増やすことにつながります。

また、オリゴ糖は善玉菌の増殖を促す働きのある物質で、玉ねぎ、ごぼう、アスパラガス、豆類、バナナ、はちみつなどに多く含まれます。

ですから、これらの食品を積極的に日々の食生活に取り入れることが皮膚炎の改善の第一歩になるのです。

反対に、悪玉菌の増殖を促す動物性タンパク質や動物性脂質の過剰摂取は、皮膚炎を悪化させることにつながりかねませんので、注意が必要です。

また、食事の工夫以外にも、適度な運動を行ったり、十分な休息・睡眠を積極的にとることは腸内のバランスを整え、皮膚炎を改善させる効果があると考えられます。

特に皮膚炎を治すためには便秘の解消は必須と言えますが、便秘に効果的なのは運動によって腸の蠕動運動を活発化させたり、蠕動運動と関連が深い副交感神経を最大限機能させるため質の高い睡眠をとること。

このような毎日の生活の中での工夫の積み重ねが皮膚炎の軽減につながるのです。

皮膚炎や肌トラブルの理由や原因をしっかり知り、対策を学ぶことで、トラブルを未然に防いだり、症状を軽減させることができます。

腸内環境を意識して腸からキレイになることが、健康的な肌を維持するための第一歩。美容に力を入れたいのであれば、まず腸内環境に力を入れることが大切なのです。

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この記事の筆者

腸内細菌博士
1977年生まれ。京都大学・大学院にて分子細胞生物学を専攻。腸による脂質代謝や栄養吸収を細胞レベルで研究、また腸に関連する疾患の予防、治療方法の基礎研究に従事。

ほか、腸の働きと関連性のある自律神経系や免疫システムについては、現在も米国科学雑誌等で最新研究動向をウォッチ中。現在、米国にてMBA留学中。

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