胃腸が弱いは変えられる!体質改善の方法
「子供のころから胃腸が弱い」といった悩みを抱えている人が実は多いそうで、自宅には常備薬として正露丸などの胃腸薬を必ず用意しているといった話も良く耳にします。
ただ一言に「胃腸が弱い」といっても、その状態や感じ方には個人差があり、症状はいろいろ。
ここでは胃腸が弱い人、あるいは胃腸が弱くなりがちな生活習慣についてや、胃腸が弱い状態をどうしたら改善できるかについて解説していきます。
「胃腸が弱い人」ってどんな人?
この記事をご覧になられている方の中にも、「自分は胃腸が弱い方だ」と感じている方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、胃腸が弱いと感じる状態やその原因は人によりさまざまなようです。
例えば、ストレスを感じたり、緊張したりするとすぐに下痢のような症状が出てしまう人も「胃腸が弱い」と言いますし、少しでも食べ過ぎたり飲み過ぎたりすると、翌日すぐに胃もたれや食欲不振を起こしてしまうような人も自分のことを「胃腸が弱い方だ」と言いそうです。
また慢性的に便秘がちで便通が定期的に訪れないという方の中にも「胃腸が弱い」と感じる方が多いよう。一見すると症状はさまざまですが、いずれの症状にも共通して言えることは、胃腸が正しく働いていない、機能していないということなのです。
私たちの健康を支える胃腸の大切な働き
便秘や下痢といった症状は、正常な大腸の機能の1つである「糞便を作り出す」という機能がうまく作用していないことが原因かもしれません。
通常、食事を通して口から摂取した食物はまず小腸に入り、そこで栄養分が吸収された後、ドロドロとした液状(粥状)になって大腸へと流れます。
通常、大腸はここから水分を吸収することで糞便に変え、ぜん動運動と呼ばれる運動によって肛門へと糞便を送り出すのです。
一日三食の規則正しい食生活が送れずに、極端な偏食(一食の食事量が極端に多かったり、食事の品目が極端に偏っていたり)があったりすると、この大腸の水分を吸収したり、糞便を作り出す機能が損なわれてしまうのです。
例えば、消化・吸収に時間のかかる動物性脂肪や動物性タンパク質を多く含む食事が増えると、大腸での水分吸収にも時間を要してしまい、結果的に便が腸内に長く留まる便秘に近い状態に陥いる可能性があります。
また食事の量が減少したり、特に食事に含まれる食物繊維の量が低下すると、便の量が減少することになり、大腸のぜん動運動が活性化されにくくなります。このような症状も便秘に近い状態を引き起こす恐れがあります。
その症状と主な理由
一般に「胃腸が弱い」と自覚されている方の主な症状と、考えられる理由・原因についてまとめてみました。以下のような症状が胃腸が弱い方に多い症状になります。
①ストレスや緊張があるとすぐに下痢や腹痛が起きる
大事な試験の前、あるいは大人数の前での発表・プレゼンテーションの前などに、便がゆるくなりすぐにトイレに行きたくなるという方もいらっしゃいますよね。
腸の働きは自律神経と密接に関連しているため、緊張やストレスにより自律神経に不調をきたすと、それは腸にまで影響するのです。
軟便になるということは自律神経の失調により大腸での水分の吸収が上手く行われていない、あるいは大腸のぜん動運動が極端に活性化されてしまっているなどの理由が考えられます。
②少し食べ過ぎただけで、ひどい胃もたれや胸やけが起きる
暴飲暴食の程度には個人差がありますが、自分が「少し食べ過ぎたかな?」と感じた翌日には決まって胃もたれや胸やけ、膨満感や腹痛が起きるという方もいらっしゃいますよね。
食べ過ぎると胃腸が弱くなる理由には胃酸がかかわっています。
例えば、大量の食物を摂取したために消化のために分泌される胃酸の量が追いつかなくなり、未消化の食物が胃に長く留まってしまうことで胃もたれや食欲不振を起こすことがあります。
逆に、消化しづらいものを多量に摂取すると必要以上の胃酸が分泌されてしまい、これが食道に逆流して胸やけなどの症状を引き起こすこともあるのです。
これは逆流性食道炎などの疾患にまで重篤化する場合もあるので注意が必要です。
③慢性的な下痢や便秘に悩まされている
下痢や便秘といった症状が慢性的に続く場合は、腸内環境が悪化したまま正常な状態に戻っていない可能性があり、それには生活習慣に理由がありそうです。
例えば、暴飲暴食はしていなくても食事の時間が不規則であったり、栄養が偏っていたりすると腸内環境は悪化します。
食事以外にも、慢性的な運動不足や睡眠不足によっても腸内環境が悪化することがあるため、それらの生活習慣そのものが改善されないと胃腸が弱い状態から抜け出すことは難しそうです。
④一度、胃腸が弱くなると食欲が減退し、いつまでも改善されない
胃腸が弱っている状態が長く続くと食欲が涌かなくなったり、食事量が減少したりしますよね。実はこのことがさらに胃腸を弱めてしまう理由になるのです。
食事量が減ると糞便の量が増加しないため、さらに長く便が腸内にとどまることになります。糞便が腸内に留まると腸内細菌のうち悪玉菌の増殖が活性化されてしまい、腸内環境が悪化してしまいます。
腸内環境は「セロトニン」と呼ばれる神経ホルモンの産生にも関与しており、このセロトニンはうつ病などの精神疾患にも関連がある物質です。
腸内環境が悪化するとこのセロトニンの産生が滞り、やる気や意欲の減退、重篤化するとうつの症状を引き起こします。
このことが、さらなる食欲不振につながり、いつまでも胃腸が悪い状態から抜け出せない負のスパイラルに陥る危険性もあるのです。
胃腸が弱いをすぐに改善!効果的な治し方
このように胃腸が悪い状態やその原因を放置しておくと、なかなか改善されないばかりか、重篤化してさまざまな疾患を引き起こす恐れもあります。
胃腸が弱いと感じたら、できるだけ早く対策することがおすすめです。
胃腸が弱い状態を改善するには食事内容や食事の習慣を見直すことが最も効果的ですが、場合によっては食事以外にも運動や睡眠なども含めた生活習慣全体を見直すことも必要です。
消化の良いものを中心に、できるだけ規則正しい食生活を
胃腸が弱い状態を改善するためには、まずは規則正しい食生活を心がけることが重要です。一日三食をできるだけ同じ時間に、また食事量もできるだけ毎日同程度の量をとると良いでしょう。
深夜に食事をとってしまうと睡眠中も胃腸が消化のために働き続けなくなってしまい、胃腸にとって休まる時間が減少してしまいます。
また食事の量が食事ごとに極端に違うと胃酸が分泌されなくなったり、逆に過剰に分泌されてしまう恐れがあります。
まずは胃酸のことを意識して、「自分の胃が分泌する胃酸で消化できる程度の食事量」を心がけ、そして消化の良いおかゆやうどんなどの食事を積極的に取り入れることが胃腸が弱いを改善するための第一歩です。
動物性タンパク質や脂肪を避け、食物繊維・オリゴ糖を積極的に摂取!
すでに胃腸が弱い状態になっているという場合、腸内環境が悪化している可能性があり、この腸内環境を改善することが胃腸が弱いを改善することに繋がります。
腸内環境の改善にも消化に良いものをできるだけ摂取することがおすすめで、逆に動物性のタンパク質や動物性脂肪は消化・吸収されにくいため避けた方が良い食品と考えられます。
また腸内環境を改善するためには、便通を促進する効果のある食物繊維や、善玉菌を増殖させる効果のあるオリゴ糖を積極的に摂取することも効果的。
腸内環境が改善され、大腸での水分の吸収や排便がスムーズになれば胃腸にかかる負担も減り、胃腸が弱い状態の改善につながるでしょう。
食事の後には十分な休息、消化のための時間を
食事により摂取した食物を消化するために、胃腸は多大なエネルギーを必要とします。消化に必要なエネルギーを胃腸に届けるためにも、食後は十分な休息が必要です。
食後に十分な休息をとらないと未消化の食物が胃に留まってしまったり、大腸のぜん動運動が正しく行われずに下痢や便秘といった排便にかかわる問題が生じる可能性があります。
また、緊張やストレスがあると休息をとっているつもりでも、休めていない場合もあります。音楽を聴いたり、静かな環境に身を置くなど、できるだけ身体がリラックスできるように努めることも消化に効果的。
このように、胃腸を弱めないように、つまり胃腸が働かなければならい時に必要なエネルギーが配分されるように心がけることが大切です。
食事以外にも定期的な運動や質の高い睡眠をとることが重要
胃腸が弱い状態を改善するには食生活の見直しが重要ですが、食事以外にも注意が必要なのが運動や睡眠。例えば運動不足の状態や、あるいは加齢によって筋力が低下すると、排便する力も衰えていきます。
これは結果的に腸内に便がとどまる時間を長引かせることに繋がり、腸内環境を悪化させて胃腸を弱めてしまうことに繋がります。
また、睡眠不足が続いたり、十分な休息が得られていない状態では、自律神経の1つである副交感神経が十分に働かなくなる恐れがあります。
副交感神経は大腸のぜん動運動と密接に関係しているため、睡眠不足や疲労によって大腸のぜん動運動が正常に機能しなくなり、腸内環境が悪化させる可能性もあります。
腸内環境を良い状態に保ち、胃腸が弱い状態に陥らないためにも定期的な運動習慣や、十分な睡眠時間を日常的に確保できている状態が必要なのです。
胃腸が弱いということで悩んでいる方も多いと思いますが、正しく原因を理解して、必要な対処を行えれば、必ず改善するはずです。
胃や腸における食物の消化、栄養素や水分吸収のメカニズムを把握し、良い生活習慣を心がけることで、健康的な胃腸を維持していきましょう。
この記事の筆者
腸内細菌博士
1977年生まれ。京都大学・大学院にて分子細胞生物学を専攻。腸による脂質代謝や栄養吸収を細胞レベルで研究、また腸に関連する疾患の予防、治療方法の基礎研究に従事。
ほか、腸の働きと関連性のある自律神経系や免疫システムについては、現在も米国科学雑誌等で最新研究動向をウォッチ中。現在、米国にてMBA留学中。