腸内環境の乱れがカラダの健康を大きく左右する

健康的な生活を語る上で欠かすことができない「腸内環境」。

腸は「第2の脳」と言われるほど私たちの想像以上に複雑かつ重要な器官で、また免疫機能から末梢神経、ホルモン物質の生産に至るまで、非常にさまざまな機能を担う器官であることが分かっています。

ですから、腸内環境の乱れにより、腸が上手く機能しなくなることは、私たちのカラダの健康を大きく左右し、さまざまな影響を及ぼすのです。

腸内環境が乱れると良くない5つの理由

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(1)自律神経やうつとの深い関係

神経物質としてよく知られているセロトニンは、不安やうつ病などと深く関係する物質ですが、実はその9割以上が腸管で作られているのです。

このため、腸内環境が悪化すると、セロトニンが産生されなくなり、セロトニン不足などの現象を引き起こしてしまいます。

腸が作り出すセロトニンが脳の活動にどの程度影響するかはまだ完全には解明されていないのですが、研究者の多くは人の精神状態に何らかの影響を与えているのは間違いないと考えています。

実際に、ある研究調査では腸内環境が悪い人ほどうつ病に近い症状(極度の不安や慢性的な疲労感など)を示すことが明らかにされています。

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自律神経失調→大腸の働き低下→腸内環境の悪化→自律神経失調…の悪循環

悪循環

また、自律神経の乱れは大腸の働きを低下させ、腸内環境の変化を引き起こすと考えられています。

自律神経とは食物の消化や、呼吸、睡眠など健康な生活には欠くことのできない神経で、大きく分けて交感神経と副交感神経の2つがあります。

主に日中帯、身体の活動が活発な時に作用するのが交感神経で、逆に夜間などの安静時や睡眠中に働くのが副交感神経です。

自律神経は身体的、精神的なストレスの影響を受けることが知られています。

例えば、緊張やストレスは交感神経が刺激するのに対し、この心身の緊張感が夜になっても抜けないと副交感神経が活性化されないという問題を引き起こします。

このような自律神経の問題は、大腸の蠕動運動にも影響を及ぼします。

大腸の蠕動運動は、大腸で作られた便を肛門側に押し出すための運動で、これが弱くなると便が体外に排出されづらくなり便秘となってしまいます。

便秘は悪玉菌を増やし、腸内環境のバランスをさらに乱してしまいます。こうして腸内環境の悪循環が生まれるのです。

(2)肌荒れや美容への悪効果

腸内環境の乱れは、体調だけではなく、肌や髪の美しさにも影響を与えるのをご存知ですか?

腸内環境が悪化した状態では、いくら頑張ってスキンケアや髪のトリートメントを行っても肌・髪はキレイにならないのです。

理由は、善玉菌が減って、悪玉菌が増えたような腸内環境では、悪玉菌が作り出すアンモニアやアミン、フェノールといった有害物質が増加するからなのです。

これらの有害物質は腸管から吸収され、血流を介して全身を駆け巡り、身体にさまざまな不調をもたらします。

このうち、皮膚や頭皮に到達して蓄積した有害物質は細胞レベルで悪影響を及ぼし、結果として、肌あれや吹き出物、皮膚のくすみや乾燥が起こりやすくなったり、頭髪が育毛されにくくなったりするのです。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

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腸内環境の変化はアトピーや体臭の原因にも!

また、腸内環境が乱れた状態では細菌やウィルスに対する防御機構である免疫力も低下しているため、菌類やウィルスが血中に侵入しやすい状態になっています。

このため、身体のさまざまな場所で炎症が起こりやすくなるのですが、このことが乾燥肌や敏感肌、アトピーなどの肌トラブルの引き金となっているケースもあります。

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さらには、そのような有害な物質が身体中を循環することで、体臭にも影響を及ぼすようです。

つまり、腸内環境の悪化により身体が臭くなってしまうということも考えられます。

このように腸内環境の悪化は美しさにも影響を与えるのです。

善玉菌は加齢とともに減少してしまうのですが、この減少を防ぎ、腸内環境を最適な状態に保つことは「見た目」を美しくしたり、若返らせる効果を期待できるのです。

(3)肥満やメタボの原因にも?!

近年、肥満やメタボリックシンドロームの形成においても、腸内環境の果たす役割に注目が集まっています。

最近の研究結果では、腸内環境の変化によって腸での栄養の吸収過程に変化が起こり、それが肥満の発生と関連している可能性があることなどが分かってきています。

また、肥満がある人とそうでない人では腸内環境、特に腸内細菌の種類に違いがあることも明らかにされています。

例えば、人間の腸内細菌は「B類」か「F類」の大きく2つに区別されるのですが、肥満の人は「B類」の割合が少ないとのこと。

マウスを使った実験では、太ったマウスにカロリー制限を行って体重を減少させたところ、「B類」が大きく増加し、逆に「F類」が減少したそうです。

詳しいメカニズムはまだ分かっていない部分が多いのですが、腸内細菌の種類や、特定の腸内細菌の存在数が肥満やメタボに影響を与えていそうなことは明らかになってきています。

肥満の原因となるような「デブ菌」が見つかる日も、そう遠くは無さそうです。

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(4)「大腸がん」の原因になる!

近年、増加傾向にあって注目を集めているのが大腸がんです。特に女性で大腸がんによる死亡が増えています。

2013年に行われた国立がん研究センターの調査によると、女性のがんによる死亡約15万症例のうち、大腸がんによる死亡は約21千件と全体の14%を占め、がんによる死亡で最も多い結果となっています。

男女合わせても、肺がん、胃がんに次いで3番目にがん死亡の原因として多いのが、この大腸がんなのです。

大腸がんは昔から多かったという訳ではなく、厚生労働省による人口動態統計によると、1950年から2000年までの10年間で大腸がんによる死亡はなんと約10倍にまで急増しています。

急増する日本人の大腸がん…原因は食生活の変化

この大腸がんの急増している背景の1つとして、食生活の欧米化、特に動物性脂肪の摂取量の増加による腸内環境の悪化が考えられています。

大腸がんは、大腸の粘膜の細胞の遺伝子に異常が発生、何らかの原因で細胞ががん化してしまうことで発症すると考えられていますが、この粘膜細胞のがん化や異常の発生に、腸内の状態、いわゆる腸内環境が深くかかわっているのです。

たとえば、動物性脂肪(牛肉、豚肉などの獣肉)、牛乳や乳製品などの動物性食品の摂取が増え、米や食物繊維の摂取が減るなどの私たちの食生活の変化により、脂肪の消化酵素である胆汁酸※の分泌量は増加してきています。

※胆汁酸:脂質の消化、吸収をたすける消化液。悪玉菌の作用により”二次胆汁酸”に変化する。この”二次胆汁酸”が大腸がんの原因とされている。

また食物繊維の摂取量が減り、便が腸内に留まる時間が長くなる「便秘」状態になると、腸内に悪玉菌が増えることが分かってます。

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(5)「免疫力」を低下させる!

私たちの腸内細菌、実は免疫とも深い関係があります。

腸は摂取した食物から栄養分を吸収する役割を担っていますが、それと同時に食物に含まれる細菌やウイルスは身体の中に取り込まないように防御し、便として体外に排出する役割も担っています。

このため腸の粘膜やヒダにはリンパ球といわれる免疫細胞が非常に多く存在するのです。

腸にある免疫細胞の数は、人体の全免疫細胞の70%が腸に存在していると言われております。

腸内環境のバランスが崩れると、全身の免疫系が過剰に活性化されたり、逆に免疫系が働かなくなることが知られています。

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この記事の筆者

腸内細菌博士
1977年生まれ。京都大学・大学院にて分子細胞生物学を専攻。腸による脂質代謝や栄養吸収を細胞レベルで研究、また腸に関連する疾患の予防、治療方法の基礎研究に従事。

ほか、腸の働きと関連性のある自律神経系や免疫システムについては、現在も米国科学雑誌等で最新研究動向をウォッチ中。現在、米国にてMBA留学中。

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