腸内環境の正常化で大事なこと

「腸内環境が悪いかも?」と感じる瞬間はあったとしても、どうしたら腸内環境をもとの状態に戻せるのか、正常化するにはどうしたら良いのか、正しく理解できていない方も多いようです。

とにかくサプリメントを摂取すれば良い、という安易な考え方には注意が必要。

腸内環境が悪化してしまった原因を把握して、その原因を丁寧に取り除きながら、できるだけ早く腸内環境を正常化して、元の健康的な生活を取り戻したいですよね。

腸内環境が悪い。その状態の定義と考えられる主な原因

「健康的な生活には良い腸内環境の維持が必要」

「悪化した腸内環境はできるだけ早く改善した方が良い」

とはよく耳にする話ですが、具体的にはどんな状態が腸内環境が悪いと言えるのでしょうか?

正常な腸内では、善玉菌、日和見菌、悪玉菌といった腸内に生息する腸内細菌が2:7:1の割合でバランスよく存在していると言われています。

逆にこの腸内細菌のバランスが崩れている状態は腸内環境が悪いと言えます。

腸内細菌の割合を正確に把握することは難しいのですが、一般に腸内環境が悪い(つまり、腸内で悪玉菌が優勢になっている)状態では、便秘になったり、逆に下痢気味であったり、排便やおならが正常時よりも臭うといった症状が見られます。

こういった自覚症状がある場合は、腸内環境が悪化していることを疑ってみるべきで、もしかしたら腸内環境を正常化する必要が発生しているのかも知れません。

①食生活の乱れ

便秘や下痢といった症状は、大腸の正常な糞便を作り出すという機能が低下していることが原因かもしれません。

通常、食事で摂取した食物は小腸で栄養素が吸収された後、ドロッとした液状になって大腸に入ります。

正常な大腸はここから水分を吸収し、糞便を作り出し、ぜん動運動と呼ばれる運動によって肛門へと糞便を送り出します。

正常な食生活ではなく、極端な偏食があったりすると、この大腸の糞便を作り出す機能が損なわれます。

例えば、消化・吸収されにくい動物性脂肪や動物性タンパク質の多い食事が続くと、水分の吸収に時間がかかり、結果的に便が腸内に長く留まる便秘に近い状態に陥ったり、また食事量そのものや、特に食物繊維の摂取量が低下すると、便の量が減少するために大腸のぜん動運動が活性化されにくくなり、こちらも便秘に近い状態を引き起こす恐れがあります。

②ストレスや睡眠不足

大腸のぜん動運動は自律神経と密接な関係にあります。

自律神経が正常に働いていないと、大腸のぜん動運動が低下し、排便が滞ってしまうため、腸内環境は悪化すると考えられます。

自律神経とは交感神経と副交感神経の2つからなる神経で、交感神経は主に昼間の活動時に、副交感神経は主に夜間の休息時に活性化されます。

強いストレスがあると交感神経が刺激されたままとなり、夜間の休息時にもかかわらず副交感神経が働かなくなったり、また睡眠時間が極端に不足した場合も同じく副交感神経の作用が低下することになります。

これらのストレスや睡眠不足により自律神経が失調した結果、腸内環境が悪化していることも考えられるのです。

腸内環境を正常化するためには、これらのストレスや睡眠不足の原因を取り除いてあげる必要があると言えます。

③運動不足

慢性的な運動不足や、運動不足・加齢などに伴う筋力の低下も腸内環境の悪化を招くとされています。

特に腹筋力の低下は大腸から便を肛門へ押し出す力の低下にもつながり、便秘の要因になる場合があります。

また運動による身体への適度な疲労が無く、寝つきが悪くなったり、その結果として自律神経の働きが損なわれる場合もあります。

以前は習慣的に運動していたのに、その運動習慣が無くなった結果、便通が悪くなり腸内環境が悪化した、というような場合は、やはり定期的に運動する時間を確保することが腸内環境正常化の根本的な対策になると言えるでしょう。

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腸内環境を正常化するために必要なこととは?

一度乱れてしまった腸内細菌のバランスを正常化し、腸内環境をもとの状態に戻すためにはどんな点に注意する必要があるでしょうか?

もちろん悪玉菌が増殖し、相対的に善玉菌が減少した腸内に、乳酸菌などの善玉菌をサプリメントなどで摂取し、善玉菌を増加させることも解決方法の1つになりますが、先に述べた通りに根本的な生活習慣を修正・改善しない限りは再度、腸内環境の悪化に陥ってしまう可能性があります。

根本的な原因を解消し、一時的にではなく継続的に腸内環境を正常化するためには、次のような生活習慣の見直しが必要だと考えられます。

1.食生活を見直そう!特に食物繊維の摂取量が正常化のカギ

腸内環境正常化のカギとして最も重要なのは、毎日の食事の内容。

どれだけ運動したり、サプリメントを取ったとしても、1日3食の食事内容が悪ければ元も子もありません。

食事は毎日、毎食、出来るだけ決まった時間に、バランスの良い食事をとることが重要ですが、中でも重要なのが食物繊維の摂取量。

食物繊維には水溶性、難溶性の2種類があり、水溶性の食物繊維には糞便をやわらかくする効果があり、また難溶性の食物繊維には糞便の量を増加させ、排便を促進する効果があります。

食物繊維を十分に摂取することで、便秘になりづらい身体づくりをすることができるのです。

またもちろん、乳酸菌などの善玉菌を多く含むヨーグルトや、善玉菌の増殖を促すオリゴ糖を多く含む食品(バナナやハチミツ、玉ねぎ、ごぼうなど)を積極的に摂取することも腸内環境の正常化に有効です。

逆に、肉類や揚げ物など動物性のタンパク質、脂質を多く含む食事は、腸内環境の正常化に逆効果。腸の調子が悪い時はできるだけ避けた方が良いでしょう。

2.十分な休息・睡眠をとり、自律神経をケアしましょう!

大腸が正常に機能し、良い腸内環境を維持するためには、交感神経・副交感神経が正常に働く、つまり自律神経が正常に機能している状態を維持することが必要です。

忙しくて十分に休息の時間が取れていない、精神的なストレスによりなかなか気が休まらない、そんな時こそ意識的にリラックスできる時間を確保することが重要です。

リラックスできる環境と言うのは人それぞれですが、重要なのは心を静めて、副交感神経が十分機能するように心がけること。

腸内環境の正常化のためには、しっかりとON/OFFを切り替える習慣が重要なのです。

3.定期的に適度な運動をする習慣を!

適度な運動をして身体の筋力を一定程度維持することは、排便する力を維持するためにも重要なことです。

加齢とともに自然と筋力が衰えてしまうため、意識的に運動を日常生活の中に取り込むことが重要です。

日々の通勤・通学の中でできるだけ歩く時間を確保したり、意識的に階段を使うようにするということでもはじめは良いかも知れません。

特に腹筋力を高めることは腸内環境の正常化に効果があると考えられますので、睡眠前などに自宅での腹筋運動を習慣化するのも有効でしょう。

また運動をして身体を疲れさせることで、十分な休息・質の高い睡眠を得られるという効果も期待できます。

身体が十分にリラックスしていれば副交感神経が十分に機能するだけでなく腸での食物の消化・吸収が促進される効果もあります。

もし日常的に運動不足を感じられている場合は、このような運動は腸内環境の正常化にとって欠かせないものと考えられます。

腸が正常に機能するためには、食生活、休息・睡眠、運動など、毎日の生活習慣の質を少しずつでも高めていく必要があります。

腸内環境の正常化に安易な方法は無いのだと考えて、1つずつ、ご自身の生活を見直されていくことをおすすめします。

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この記事の筆者

腸内細菌博士
1977年生まれ。京都大学・大学院にて分子細胞生物学を専攻。腸による脂質代謝や栄養吸収を細胞レベルで研究、また腸に関連する疾患の予防、治療方法の基礎研究に従事。

ほか、腸の働きと関連性のある自律神経系や免疫システムについては、現在も米国科学雑誌等で最新研究動向をウォッチ中。現在、米国にてMBA留学中。

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