そもそも「おなら」とはなんだろう?
「おなら」と聞くと、何となく笑っちゃったり、下品と感じたり、中には顔をそむけたりする人もいますよね。それは、たぶん、毎日の生活の中で誰もがおならをするし、我慢したくてもできなくて、失敗する経験を一つや二つは持っているからでしょう。
また、お尻から所構わず出る臭いガスともなれば、顔をそむけたくもなりますよね。そして、極めつけはあの間抜けな「ぷう~」という音!「まったくおならってやつはどうしようもない厄介な代物だ」って誰もが思いますよね。
でも、おならが出ないと大変だってことも知っていますよね。さて、おならはどうして出るのでしょう?そして、どのように私たちの健康に関わっているのでしょう?
おならは腸内細菌が作るガスのこと
おならは、主に大腸で腸内細菌から発生するガスのことです。成人では1日に0・5~1・5リットルも作られ、大体20回に分けて肛門から排出されるんですね。
胃や小腸で消化されなかった食物のカスが大腸に運ばれて、腸内細菌によって発酵され、その時発生したガスがおならの正体です。
ですから、消化されにくい食物繊維を多く含むおイモなどをたくさん食べると、いつもよりもガスが多く作られおならもたくさん出ることになります。
おならの成分はほとんどが空気
おならは、腸内細菌の作ったガスと、体の外から食事の時に取り込んだ空気が混ざったものです。体外からの空気が9割を占めていて、腸内細菌が作ったガスは1割程度です。
ご飯を食べる際に、大きく口を開けて食物とともに空気をたくさん取り込むと、おならもたくさん出ることになるんですよ。
おならの匂いは食べたものと体調によって変化する
おならの臭いは、食べたものによって違ってきます。例えば、イモなどの繊維質は、メタンや水素ガスを多く発生させますが、これらはほとんど臭いません。
ところが、ネギやニンニク、卵、肉など硫黄成分を多く含む食事では、インドールとかスカトールといった強烈な悪臭を放つガスが発生しやすくなります。
また、体調によって腸内細菌の種類が変わることがあり、おならの臭いも変化します。おならの臭いが変わった時には、食事の内容をチェックしてみて、ヨーグルトなどの乳酸菌食品などを食べるなどして整腸してみるといいでしょう。
おならは腸の健康のバロメーター
おならが肛門から出るのは、腸の動き(蠕動(ぜんどう)といいます)によるものです。腸の動きが鈍ったり、腸がふさがっていたりするとおならは出にくくなり、おなかがパンパンに張ってしまうことがあります。
おならが出るということは、「腸がちゃんと動いて、食べたものを消化できるよ」という合図なのです。虫垂炎(盲腸)の手術の後に、おならが出るまでは飲食禁止と言われることがありますが、腸の動きが正常化したという合図がおならなのです。
体の仕組みは巧みにできており、おなら一つとっても健康状態を示すシグナルになっていることを紹介しました。このようなシグナルには日ごろから敏感になっていると自分の健康状態をチェックすることになり、異常を早期に発見できるきっかけにもなるんですよ。
この記事の筆者
仁古里 笑 (経営コンサルタント)
1990年代初めから、病院での臨床医学研究、海外大学での基礎医学研究、製薬会社での創薬研究・開発など、20年近く医学・生物学・薬学の研究・開発に携わる。もともとの専門が粘膜免疫であり、腸内細菌と腸の粘膜免疫との関連、そこからの全身疾患への影響などに精通している。
現在は専門を経営学に転じ、病院経営などの支援をしながら、一般の方に向けて身体の仕組みや病気のこと、薬のことなどをわかりやすく説明している。