おならの悩みにお答えしてみました

おならは誰しもがするものですが、下(しも)のことでもあり、あまり表だって取り上げられることはありません。医学的に見てもおならが注目されることはあまりなく、専門の研究者もほとんどいません。

だからと言って、おならについて関心がないかと言ったら、そのようなことはなく、「おならについて悩んでいるので、きちんと知りたい」と思っている方はかなりいらっしゃると思います。

そこで、今日はおならについて悩んでいる方に向けて、お役立ち情報をご提供したいと思います。

おならは女性共通の悩み

日経ウーマンオンライン(2012年5月31日記事)が読者377人に行った「腸に関するアンケート」で、腸やお尻に関する悩みの中で「おならが出ること」と答えたのが46%、「おならが臭い」と答えたのが30%いたと報告されています。

このサイトは女性専用ですので、回答者のほとんどが女性と考えられ、その約半数がおならが出ること(回数が多いこと)に悩みを抱え、3分の1程度の方がその臭いに悩まれていることがわかります。

おならは女性にとって、とても関心の高い問題であることがわかります。

おならの悩みだけで病院などの医療施設を訪れる方はほとんどいないと考えられます。また、おならの悩みを人に打ち明けて相談するという方もほとんどいないと思われます。

つまり、多くの女性がお一人でおならについて悩まれているということになりましょう。

おなら五つの悩み

今紹介したアンケート結果やさまざまなインターネット記事などから、おならの悩みや問題を次の五つに絞ってみました。ここでは、これらの問題について解決策を提案していきます。

  1. そもそも私のおならは正常なの?異常なの?
  2. 誰にでもある!おならの緊急事態にはどうすればいいの?
  3. おならの回数を減らすにはどうすればいいの?
  4. おならの臭いを抑えるにはどうすればいいの?
  5. 巨大おなら製造装置、便秘はどうすれば解消できるの?

おなら問題の達成目標とは、ふつうのおならにすること!

冒頭でも述べましたが、人間誰しもがおならをします。おならが出るということは、口から肛門までがふさがっておらずきちんと開通しており、腸が動いているという喜ばしい証拠です。

おなかの手術をした後に「ガスが出たら教えてくださいね」と言われるのは、腸がふさがっておらず正常に動き出したという大事なことを確認するために行います。

おならの悩みを抱えている人が目指すべき目標は「ふつうの(正常な)おならの状態にすること」と言えます。ふつうの回数、ふつうの臭いのおならを目指しましょう。

おならをしないとか、全く臭わないおならなどということは、むしろ正常から外れることですので、目指すべきではありません。

では、正常なおならとはどんなものでしょう。次から説明していきます。

そもそも私のおならは正常なの?異常なの?

さあ、おなら問題解決に向けての目標が決まりました。目指すは普通のおならです。

まず、みなさんのおならの状態がふつうの状態からどの程度かけ離れているかを知る必要がありますので、ここではいったん「ふつう(正常)のおなら」のお話をします。

正常なおならを知ろう

おならとは、言うまでもなく肛門から排出されるガスのことです。成人の場合、1日平均0.5~1・5リットルのおならが作られ、5~20回くらいに分けて排出されます。

ここから正常なおならの頻度は1~5時間に1回程度ということになります。

おならのガスの90%程度が、食事などと一緒に口から胃に入った空気です。残りは腸で腸内細菌によって産生されたガスです。おならの量に大きな幅がありますが、口から胃に入る空気の量に個人差があるためです。

においは、腸で腸内細菌によって食物が分解される際に発生するガスに由来しています。つまり、腸(大腸)にたまった食物残渣(しょくもつざんさ)である大便の中で、腸内細菌が作り出すガスがおならの臭いの正体です。

大便の臭いがしない人はいないように、おならの臭いが全くしない人がいないのはこのためです。

腸内細菌によって産生されるガスには、食物繊維が分解される際に生じるほとんど無臭の水素ガスやメタンガスと、肉やネギ、にんにく類などのイオウ成分の多い食物が分解・腐敗することで発生する強烈な悪臭を放つインドールやスカトールなどがあります。

食物繊維を多く含む菜食が中心の方のおならはあまり臭いがきつくなく、肉食が中心の方のおならは臭いがきついということがいえます。

においについては、回数のように指標がないので、正常なのかどうかの目安を決めにくいのですが、菜食中心なのにいつも臭いがきついという人や、きつい臭いに加えて習慣的な下痢や便秘を伴っている方はふつうではないと言えるでしょう。

悩むほどのおならって?

ふつうのおならについて説明しましたが、かなり幅があることがわかると思います。

おならについて悩んでいる方は、自分のおならがふつうのおならであるかどうかを客観的に評価してみてください。やっぱり、ふつうではなかったという人は、次に読み進めてください。

しかし、ふつうのおならの範囲であっても悩みの深刻度は、人前に出る機会の頻度によっても異なると思います。

ですが相手も人間ですので、ふつうかそれ以上のおならをしていますので、過度に心配することは不要であると思います。

先にも述べましたが、下痢も便秘もなく毎日おならがふつうに出るということは、腸の働きがある程度保たれているという体からの便りですので、この事実をしっかり受け止めましょう。

誰にでもある!おならの緊急事態にはどうすればいいの?

おならがふつうでも「出物腫れ物所嫌(かま)わず」といいますから、人前で催すこともありましょう。このような緊急事態にはどのように対処すべきでしょうか?

完璧に回避する方法はありません。あえて言えば、トイレに行くことくらいでしょうか。どさくさに紛れて、周囲の音に合わせて放屁(ほうひ)なんてことはお勧めしません。

結構周囲は聞こえていますし、臭いが漂ったらそれは気まずいことになりかねません。

トイレに駆け込むことができないのであれば、我慢するしかありません。ひたすら肛門をギュッと締めることです。

この時に肛門は二つの敵と戦っています。一つは肛門の手前まで来ているガスの圧力と、もう一つはくじけそうになる自分自身の意思です。

肛門を締め付けるため筋肉の一部は、意思で肛門を開閉させることができます。この筋肉を意志の力で締め続けることがおならを我慢するためのカギです。

ひたすら自分自身を励まし、意思がくじけないようにしましょう。

「これが我慢できたら自分自身にご褒美を買おう」とか「オレの肛門は鋼鉄のように強いんだ」などとなんでもいいので、自分自身を元気づけることを考えましょう。

また、おなか全体の圧力が高まるとガスの圧が強まりますので、おなか周りの衣服を少し緩めて、あまり動かないようにすることも大切です。

一方、人前に出ることが予定されていて、おならについて不安があるときは、おなかにたまっているガスを事前に出してしまうのが良いと思います。

トイレに行って座るだけで、肛門が少し開き、「おならをしてもいいんだよ」という指令が脳に届くことでおならが出易(やす)くなります。このときにおならが出れば占めたもので、その後しばらくはおならに悩まされないで済みます。

しかし、おならが出ないときには、少し息んでみましょう。また、おなかの左側をゆっくりマッサージするのも効果的です。

それでもおならが出ないときは、当面おならが出ないということですので、自分自身に対して「しばらくはおならはでないから大丈夫だよ」と言ってあげましょう。

腸と脳は密接につながっていますので、このような暗示は効果的なのです。

おならの回数を減らすにはどうすればいいの?

回数が多いという人は、ガスの量が多いことが主な原因ですので、ガスの発生量を減らすことを考えましょう。

おならのガスの約90%が口から胃に入った空気ですので、まずは胃に空気が入らないようにすることです。空気が胃に入る1番の原因は「早食い」です。ゆっくり時間をかけてよくかんで食べてください。

炭酸飲料の飲み過ぎも胃に空気を入れる原因になりますので、ビールやソーダ系の飲み物を控えることが効果的です。

しかし、楽しくビールを飲むのを止めることは、ストレスになりかえって腸内環境を悪化させる恐れがありますので、あくまでも飲み過ぎない程度にとどめるのが良いと思います。

腸内細菌によって発生するガスの量を抑えるためには、繊維質の多い食品の食べ過ぎに注意することです。

例えば、イモ類、ゴボウなどの根菜類、豆類などが大好きで、いつもたくさん食べてしまうという人は少し控えるといいでしょう。

しかし、食物繊維は必要な栄養素なので、適度に摂ることが大切です。あくまでも過食に注意するということです。

また、便秘の人でおならが多いという人は、便秘を解消することですが解消法は後述します。

おならの臭いを抑えるにはどうすればいいの?

おならの臭いは、菜食中心よりも肉食中心の人の方がきついことがわかっています。

しかし、肉食中心の人でも肉の食べる量は減らさずに、野菜の量を増やすだけで2週間目くらいから大便の臭いが和らいだという実験結果が報告されています。

肉食中心であまり野菜を摂らないという人は、繊維質の多い野菜、海藻類、きのこ類、根菜類、豆類を毎日少しずつでもいいので食べましょう。

きついおならの臭いは、肉などタンパク質、ネギやにんにく類などのイオウ成分の多い野菜が腸内で腐敗することが原因です。

腐敗は腸内の悪玉菌によって進みますので、悪玉菌の活動を抑える必要があります。そのためには、悪玉菌の働きを抑える善玉菌が多く含まれているヨーグルトや乳酸飲料を積極的に摂ることが有効です。

これらの食品が苦手という人は、乳酸菌などを含むサプリメントなどを服用するのも良いでしょう。

巨大おなら製造装置、便秘はどうすれば解消できるの?

便秘は大便が腸に大量に長時間貯留した状態です。便通が悪いことで、腸内での大便の腐敗が進み強烈な臭いのガスが大量に発生します。つまり、便秘の人は、体の中に巨大おなら製造装置をいつも抱えているのと同じなのです。

腸内で作られたガスの一部は腸から吸収され、血液で全身に運ばれ、臭いが体中から染み出し全身が何となくおなら臭くなります。

さらに、有害な成分によってお肌や免疫機能、全身諸臓器に悪影響を与えます。長期間の便秘の人は便通の良い人よりも結腸がんにかかりやすいという人もいます。

頑固で長期間にわたる便秘の方は、病院での治療が必要ですので、一度お医者さんに相談してください。

しかし、比較的軽い便秘(週に最低1回はお通じがある)の方は、日常生活の改善で便秘を解消させることが可能です。次の4点を実行してみてください。

  1. 野菜を多くとること
  2. 善玉菌の多く含まれているヨーグルトや乳酸飲料を多くとること
  3. ストレスをためないこと
  4. 適度に運動をすること

これらを実行する上での共通する注意点は、あまり徹底的に行わないことです。そこそこにやるのが長続きのコツです。ストイックになり過ぎると、ストレスを感じることになり、かえって逆効果です。

1と2については既に説明した通りです。ストレスは腸にとって大敵です。ストレスがたまらないようにすることと、ストレスがたまったら早めに解消することが大切です。

ご自身の生活やお仕事でのストレッサー(ストレスの原因)を追究し、なるべく回避することを思案してみてください。避けられないストレスならば、解消することを考えてみましょう。

ストレスばかりは自分で何とかしなくてはなりません。それゆえ、最も難しい問題とも言えます。現代社会に生きる人々の宿命とも言えますし、ストレスを回避できることが生きるコツとも言えます。

ご自身と向き合って対話をしてみてください。

自分のストレッサーがなんであるか、そのストレッサーを避けるためにはどうすべきか、避けられないときにはどうすればそのストレスを和らげることができるのかなどを考えてみましょう。

運動不足も便秘の原因になります。高齢化に伴い便秘の方が増えますが、高齢になり身体をあまり動かさなくなることが原因の一つです。

軽くてもよいので毎日の運動を心掛けましょう(寝る前の数分の腹筋体操やおなか周りをグルグル回す体操だけでも効果が出ます)。

便秘解消のためには、根気よく続けることがとても大切です。ご紹介した方法のどれか一つでもいいので始めて見てください。

続けることで必ず成果は現れます。成果が出たらやる気も出ますので、少しずつ良い習慣を増やしていってみてください。

腸を健康に保ちましょう

おならや大便が作られる腸は、体の中心にあって、その内腔の表面積はテニスコート1面分と言われているくらい大変大きな臓器です。

前述の通り、腸の不調は身体全体に広く影響をおよぼします。腸を健康に保つことは、おならを正常化するだけではなく、全身状態をよく保つ上では必須と言えることなのです。

腸は第二の脳とも呼ばれ、大変賢く敏感な臓器です。あなたの身体の事を1番に考えている臓器です。どうか腸の声に耳を澄ましてください。おならなど腸から発せられるさまざまなシグナルは、ご自身の健康のバロメーターなのです。

おならの回数や臭いに敏感になって、変化が生じたら腸に影響を与えていないか考えてみましょう。そしてご自身の腸がどうすれば健康でいられるかを観察してみてください。腸を健康に保つことは、全身を健康に保つことなのです。

この記事の筆者

仁古里 笑 (経営コンサルタント)
1990年代初めから、病院での臨床医学研究、海外大学での基礎医学研究、製薬会社での創薬研究・開発など、20年近く医学・生物学・薬学の研究・開発に携わる。もともとの専門が粘膜免疫であり、腸内細菌と腸の粘膜免疫との関連、そこからの全身疾患への影響などに精通している。
現在は専門を経営学に転じ、病院経営などの支援をしながら、一般の方に向けて身体の仕組みや病気のこと、薬のことなどをわかりやすく説明している。

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