腸に効く機能性食品のしくみ【糖尿病患者必見】
トクホ(特定保健用食品)というものを多く見かけるようになりました。
昔から健康食品と言われるものはありましたが、トクホはきちんと科学的にその作用が証明されていて、かつ消費者庁がその食品の有効性を審査して許可した食品です。
また、消費者庁許可のトクホとは少し違うのですが、メーカーの責任において効果があることを表示した、機能性表示食品という制度も、2015年から新たに始まりました。
これらを「機能性食品」といい、食品の中では医薬品に近い位置づけとなっています。
腸に効く機能性食品の仕組みを取り上げてみたいと思います。
記事の目次
吸収を穏やかにするとは
例えば、すきっ腹でお店に走ってきて、仲間と合流していきなりお酒を飲んだら、お酒にはそんなには弱くない人なのだがすぐにお酒が回ってしまった、ということがよくあります。
しかし胃の中に何か入っていたら、アルコールの吸収がゆっくりとなるために、お酒が急に回ることも少なくなります。
この例は、胃の中の食べ物がアルコールの「吸収を穏やかにする」例です。
食べ物の中には、糖分や脂肪分を腸が吸収する速度を遅くするものがあります。そのため食後の血糖値や中性脂肪の値の急激な上昇が、ある程度抑えられる場合があります。
それに着目したものが、~~の吸収を穏やかにするトクホ、などの機能性食品です。
炭水化物とは
炭水化物の仲間の名前ですが、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、砂糖、でんぷん という言葉が出てきますので、少し説明します。
ブドウ糖と果糖は最も小さな糖の仲間です。ブドウ糖や果糖の状態にまで分解されて初めて腸から吸収されます。
ブドウ糖が2個つながったものを麦芽糖と言います。でんぷんはブドウ糖が鎖状に多数つながった構造をしていますが、でんぷんをアミラーゼという酵素がまず麦芽糖にします。
次にグルコシターゼという酵素がブドウ糖まで分解して吸収します。
砂糖は果糖とブドウ糖が1個ずつつながったもので、でんぷんとは異なりますし、砂糖を果糖とブドウ糖に分解するときも、別の酵素が働きます。
糖の吸収を穏やかにする
食事をすると、まず口の中でよくかみ砕かれて、唾液中のアミラーゼよって、でんぷんが麦芽糖に変化して、甘みを感じるようになります。アミラーゼは腸の中でも分泌されます。
次に、グルコシターゼが働きます。
腸内のアミラーゼとグルコシターゼの働きを緩やかにして、ブドウ糖の生成を緩やかにし、腸からのブドウ糖の吸収を穏やかにする機能性食品があります。
注意しなくてはいけないのは、砂糖を分解する酵素の働きを抑えるわけではないので、砂糖の吸収は穏やかにならないことです。
また清涼飲料水に多いのですが、最初からブドウ糖や果糖として食べ物に入っている場合には、これらの吸収も穏やかにはなりません。
また、前回のコラムに記載しましたが、食べる順番を野菜から食べるようにすると、食後の血糖値の急上昇を押さえたという実験結果があります。
これは食物繊維が働いたからですが、このように食物繊維を含んだ食べ物で糖の吸収を穏やかにするという方法があります。
これらの機能性食品は、膵臓(すいぞう)に直接働きかけて食べ物とは関係なしにインシュリンを出させる医療用医薬品や、直接体内にインシュリンを注射する方法とは違います。
食べ物を食べた場合に限り食後の血糖値の上昇が緩やかになるだけですので、血糖値が下がりすぎるという心配はありません。また、目安量以上に摂取してもすぐに問題が起きるわけではありません。
ですので、糖尿病の有無やその程度に限らず比較的安全性が高い方法ということになります。
脂肪の吸収を穏やかにする
食物繊維には、腸からの脂肪の吸収を穏やかにするという効果もあります。食事をすると血糖値が比較的短時間で上昇することは知られていますが、実は中性脂肪も血糖値と同じように食事により上下します。
食物繊維により、脂肪の吸収を穏やかにする、あるいは抑えることで食後の中性脂肪の上昇を抑えると、分泌するインシュリンも少なくて済むという、人間がハンバーガーを食べた実験結果もあります。
また、食物繊維をうまく利用して、糖にも脂肪にも働きかけ、食後の血糖値の上昇も中性脂肪の上昇も抑えるタイプの機能性食品も発売されるようになりました。
これはあくまで、体脂肪を減らす効果があるというわけではありません。しかしテーマから外れますので、体脂肪燃焼効果がある食品は割愛します。
腸に効いて内臓脂肪を減らす!
特筆すべき世界最先端の研究結果を踏まえた機能性食品もあります。今までの考えとは逆に脂肪の吸収を促進してやると内臓脂肪が減る、というものです。
たんぱく質は胃の胃酸で変質して、さらに胃から出るペプシンという消化酵素により分解します。ある機能性たんぱく質を、胃の影響を受けないように特別にコーティングした錠剤で腸に届けると、脂肪の分解を促進します。
すると今まで考えられていたのとは真逆に、体脂肪が減るという実験結果が得られています。
世界最先端の研究結果が正しいとなると、脂肪の吸収を抑えてはいけなかったのかも知れません。将来そういうことが分かって行くかも知れません。
世界最先端の情報なので、この項には筆者の推測が混在することをお断りしておきます。
細胞は脂肪の膜に覆われています。それは例えば皮膚細胞も腸の細胞も同じです。
脂肪は消化されていったん水に溶けますが、消化吸収された後は血中で中性脂肪に戻ります。
これらから推測して、皮膚細胞に脂肪膜があってアロママッサージのホホバオイルが吸収されるように、未消化の脂肪が腸の細胞の脂肪膜から取り込まれ、血液の中性脂肪を経由せずに内臓脂肪として蓄積する可能性を考えます。
もしそうなら、脂肪の消化を促進すると内臓脂肪が減ることと、脂肪の吸収を抑制すると中性脂肪の値が上がらないことの両方が説明できます。
そこははっきりしておらず、結局はいまだに人間は腸のことをよくわかっていないのだとも思います。
たんぱく質の吸収を穏やかにする食品はないの?
現在そういう食品はありません。
たんぱく質の分解と吸収を抑えると、たんぱく質を好む悪玉菌が増えておならが臭くなったり、おなかを壊したりする原因にもなります。
悪玉菌は、たんぱく質でできている腸管を攻撃することもあり、そうなるとおなかが壊れてしまいます。
ここは、別のコラムで少し詳しく解説します。
では、善玉菌を増やせばいいの?
その通りです。善玉菌を増やすための機能性食品もいろいろあります。善玉菌の代表格は乳酸菌です。
乳酸菌を含んだ食べ物や、おなかの中で乳酸菌の食べ物になるオリゴ糖を含んだ食べ物など、善玉菌に活躍してもらうことを考えた食品もあります。
乳酸菌は腸の善玉菌と言うだけではなく、胃の悪玉菌のピロリ菌を攻撃して退治してくれることも分かってきました。善玉菌は、頼れる相棒です。
まとめ
善玉菌を増やす機能性食品こそ、腸に効く食品として真っ先に挙げなければならなかったかもしれません。
が、他の機能性食品も巡り巡って結局は腸に効いてきます。
インシュリンは脂肪の蓄積も筋肉に指示します。過剰なインシュリンは低血糖には至らなくても、糖を脂肪に変え、皮下脂肪も内臓脂肪もつきやすくします。
これらの機能性食品も上手に取り入れると、内臓脂肪がつきにくいことで、腸に効くということにもなります。
血糖値など体の一部を考えても、結局は巡り巡って体のこと全体を考える必要が出てきます。