腸が死ぬと人も死ぬ ~放射線と腸
福島第1原発の事故は本当に大きな事故であり、放射性物質が原子炉から外に出てしまうという大変な事態になっています。放射線は人間が感じないものですが、確実に人間をむしばんでいきます。
今回のコラムは、放射線を浴びてしまった場合どうなるのか、という切り口から、腸の重要性を考えてみたいと思います。
放射線、活性酸素とは
放射線というのは光の粒子や素粒子の流れのことで、体内で活性酸素を作ります。その活性酸素が人体に問題を起こします。
このコラムではこれ以上深い知識は割愛しますが、活性酸素を作るということだけ覚えておいてください。
また、放射線関係には聞きなれない単位も多くありますが、被ばく量の単位のシーベルトという単位だけ覚えてください。
胸部レントゲンを1回撮影した時の被ばく量が1万分の1シーベルト程度(0・1ミリシーベルト)、一般人の年間許容被ばく量が1000分の1シーベルト(1ミリシーベルト)になります。
活性酸素とは、空気中の酸素よりも非常に不安定で、酸化力がある物質のことを言います。活性酸素はとても不安定なので安定しようとして、他の物質を無理やりにでも酸化してしまいます。
活性酸素によって傷がついた物質が遺伝子だった場合、正常な細胞ががん細胞になる事があります。
放射線を浴びた場合
一般人の年間許容被ばく量の1ミリシーベルトだと、統計を取ってもがんや白血病の発生の確率が高くなったのか否かわからない、被ばくしてもしていなくても変わらないという状態です。
活性酸素の発生量が少なく、活性酸素を除去できる能力に余裕があるからです。
それ以上被ばくすると、被ばくの量にしたがってがんになる確率がだんだん増えてきます。
1シーベルト程を一度に被ばくすると、髪の毛が抜けたり、目の水晶体が濁ってしまい、白内障を発症したりします。これらは体の表面に近いところにあり、外部からの放射線の被害を受けやすい部位なのです。
放射線は体を突き抜けるとはいえ、種類によっては遠赤外線のように体表面から1センチメートル程度奥まった部分までしか到達できないものもあります。これらが体表面に近い毛根や水晶体の細胞の壊死(えし)を引き起こしたものです。
さらに被ばく量が増え、5シーベルト以上になると、被ばくにより死に至ります。その場合まず死ぬのが腸の細胞なのです。
体の細胞は入れ替わっている
活性酸素で遺伝子に傷がついて細胞が死ぬ場合、傷がつくと同時に死ぬとは限りません。むしろ細胞分裂をするときに遺伝子がうまく働かず、分裂がうまくいかずに死ぬ場合が多いのです。
脳細胞や神経細胞は、体が成長した後はほとんど細胞分裂をしません。ですから、その意味では比較的放射線には強い細胞と言えるかもしれません。その替わりいったん傷つくと再生が不可能です。
ちなみに最も放射線に強い細胞は精子です。
しかし消化器である胃や腸はそういうわけにはいきません。消化酵素で胃や腸の細胞も消化されているからです。特に胃はたんぱく質を分解しますが、胃壁はたんぱく質ですからどんどん分解もされていきます。
胃や腸では、それを補う細胞分裂を行っています。
腸壁の細胞自体が分裂しているわけではありません。ちょうど皮膚が内側から外側へ向かって少しずつ表に出て行って、
最後は垢(あか)やフケとして脱落するように、腸の中で分裂して腸壁の細胞を作り出す元の細胞は、腸壁の細胞とは別に存在します。
この元の細胞が壊死(えし)を起こして腸壁の細胞の補充ができなくなります。
それでも壊死(えし)を起こした細胞の数が少ないと、生き残った細胞が頑張って腸全体の細胞の維持が可能になりますが、
腸からの水分の吸収がうまくいかず、逆に出血してしまって、体液のバランスが悪くなったり、傷口から腸内の悪玉菌に感染してしまったりして、体全体にダメージが広がります。
壊死(えし)を起こした細胞が多くなると体の回復が不可能になり、死に至ります。
まとめ
腸が傷んだらどうなるか、を、放射線を浴びた場合から話してみました。現在の日本では、放射線で腸が死ぬために体全体が死ぬことは、まずありません。
しかし、腸内出血は放射線だけで起こるものではありません。エボラ出血熱でも赤痢でも起きますし、さらにはからすぎる刺激物を食べる、暴飲暴食でも腸内出血は起きます。
外部に露出している皮膚のように、止血する訳にはいきません。
「腹も身の内」と言いますが、その腹=腸とはどういう風に壊れて、本当に壊れたらどうなるのか。それを考えてみました。
そして、食べ過ぎ飲み過ぎ、腸内細菌のバランスを崩すような刺激物の飲食が、実は放射線を浴びて死ぬのと同じような壊死(えし)を引き起こしているということ、
悪玉菌や悪玉菌が作り出した毒素が傷口から体の中に入ってきて免疫細胞と熾烈(しれつ)な戦いを行い、免疫が勝っているから生きていられることを考えてみて、もう少し食べるものの種類と量に関しても考えてみることを、提案します。